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故障修理・整備

締め付けトルク 整備ミス?設計ミス?

エンジンオイル漏れ修理のご依頼を受けました。

エンジンのヘッドカバーからの漏れ修理です。

こちらの車両は年数も経っておりパッキンの劣化もありますので交換時期でしたが、漏れた原因は他にもあるようです。

ヘッドカバーを取り外します。

 

 

鉄製のヘッドカバーで、ボルト6本で締め付けて固定しますが、ボルトの締め付け面をよく見ると・・・

かなり食い込んで変形しているのがわかると思います。

明らかにボルトの締め付けすぎです。

それに前回整備した者はオイル漏れの対策でヘッドカバーパッキンに液状ガスケットを全面に塗りたくっています。

本来は平面にパッキンを使用していますので液体パッキンは不要です。
※よく液体パッキンをあちこちに塗っているものがありますが万能薬ではなく適切な場所に少量塗布するのが正しい使用方法です。多く塗りすぎれば弊害があります。

 

このエンジンのヘッドカバーボルトの締め付けトルクはこのようになっています。

3.2±0.2N・mというこの締め付け力は、自動車で使用するトルクの中では非常に弱い締め付けトルクですので規定トルクで締め付けていればヘッドカバーは変形することはありません。

ボルトは6本しかありませんので締め付けすぎで変形してしまうとヘッドカバーパッキンを均等に押さえつけることが出来ませんので新品パッキンでもオイル漏れを起こしやすくなります。

恐らく漏れたものを何とかしようとして液体パッキンを塗りたくったのでしょう。

 

締めすぎですのでボルト周辺だけパッキンが変形して潰れていますし、液状ガスケットがはみ出しているのがわかります。

これは整備ミスと言えます。

しかし、一概に整備士のスキルの問題で片づけてはいけない根本的な原因があるのではないかと思います。

 

どのエンジンでもこのような部位にはパッキンを使用してシールする構造になっているのですがヘッドカバーの材質やメーカーの設計で固定方法が異なります。

 

こちらは似た構造のオートマチックのオイルパンのパッキンです。

パッキンにカラーが入っているのがお分かりになると思います。
ちなみにM6ボルトで締め付けトルクは7.4N・mです。

カラーがつっかえ棒になるのでオーバートルクでもオイルパンを変形させたりパッキンをつぶしすぎることもありません。

カラーの厚みでパッキンは適度につぶされる設計ですので均等に面圧を得ることが出来て漏れも防ぐことが出来ます。

 

しかし先ほどのヘッドカバーにはカラーはありませんのでヘッドカバーパッキンが潰れた分でのみボルトのトルクが掛かったようになっているだけです。

ヘッドカバーボルトに使用されているM6というサイズボルトにしては非常に低いトルクなのはパッキンを潰すだけの役割だからです。

 

他社同等のヘッドカバーの締め付けトルクはご覧のようになっています。
樹脂製ヘッドカバーでカラーがあります。

同じボルトサイズですがずいぶん違いますね。

 

 

殆どの整備士はM6サイズの小さなボルトではトルクレンチなど使用せずに手に覚え込んだ感覚で締め付けます。

一般的にボルトのサイズでどれくらいが規定の締め付けトルクかは把握しているのです。
※重要な部位などはもちろんトルクレンチを使用しますがすべてのボルトにトルクレンチを使用していたのではいつまでたっても整備は終わりません。

 

何を言いたいのかと言いますと整備士は本能的にボルトが緩むことを非常に恐れます。

今回のようなM6のボルトを他社ではカラーが入っているものでは、5~7N・mほどで締め付けているものを3.4N・mというかなり小さいトルクで締め付けなくてはならず、かつゴムパッキンが潰れるだけの感覚では締め付け不足を感じ不安になるということです。

不安でさらに締め付けるのでオーバートルクになってしまうのではないでしょうか?

 

整備する側も構造を理解して整備を行う必要があるのですが、メーカーごとに構造は違いますのでイレギュラーなことは数ををこなして経験を積まないと気が付かずミスをすることがあります。

 

良い車は走行させる性能だけでなく、どこへ行っても整備がしやすいことも重要です。

整備ミスは当然整備士のスキル不足の問題ですが、ミスを誘発しない設計も重要であり、そのような設計は結果市場での不具合(整備ミスも含め)を減らして車両(メーカー)への信頼につながることになります。

 

 

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