トラブルがない限り車検の時くらいしか点検する機会がない部位にブレーキのホイールシリンダーという部品があります。
ドラムブレーキと呼ばれるタイプに使われる部品なのですが、ドラムを外さないとみることが出来ないため車検の時くらいしか点検する機会がない(法定12か月点検を受けていればその時にも点検するのですが受けないユーザーがかなり多いです?)ため密かにトラブルを抱えていることが多いです。
今回は、トラブル事例をご紹介します。
トヨタ WILL VI
こちらの写真をご覧ください。右と左で汚れ方が違うのがお判りでしょうか?
ホイールシリンダーからブレーキフルードが漏れているためブレーキダストが濡れている部分に付着して汚れ方が左右で異なっているのです。
この車のホイールシリンダーの材質は、シリンダー ピストンともにアルミニウムを使用しているため錆の発生はありませんでしたが、このように漏れていました。
ピストンは青くアルマイト処理されています。黒い部品がカップとゴミが入らないようにするブーツです。
シリンダー内部にも傷やさびは見られません。
ちなみに前回の車検では、カップキットの交換は行われていませんでした。ということは少なくとも前の前の車検からの4年間はカップは交換していなかったということです。(前回はガソリンスタンドでの車検)
カップはゴムで出来ておりブレーキを掛けるたびシリンダー内部を摺動します、漏れはカップの摩耗が原因です。
お次はニッサン ノート(E11)のブレーキです。
ダストブーツをめくりますと・・・
こちらも漏れだしています。
赤さびが酷いです。
ホイールシリンダーの材質が、シリンダー・ピストンともに鉄でできているためにアルミニウム製に比べこのように錆びてしまっていることが大変多いのです。
錆びはシリンダー内部を侵食して凸凹を作りますのであまりにひどい場合はアッセンブリーでの交換をするしかありません。(以前紹介した記事をご覧ください)
こちらのお車は前回の車検時にカップキット(ゴム部分)の交換は行っているのですが錆の発生が酷く密閉が保てなくなってしまった例です。
お次は、軽トラックのブレーキです。
外見上、漏れは見受けられません
しかしホイールシリンダーを分解してみますと・・・
真っ赤に錆びています、これではいつ漏れ出しても不思議はありません!
こちらのお車も鉄製のホイールシリンダーを採用しています。
このように、普段ドラムの中に隠れて見えない部分にトラブルを抱えていることが多いのですが、先ほどの法定12か月点検を受けなかったり車検時カップキットの交換を行わない例が非常に多く危険にさらされていても気が付かない事がほとんどです。
最近の整備業界では、外見上漏れが確認できない限りカップキットを交換しないことが当たり前のようになっているのですが、確かに車検の際漏れていなければ車検は通ります。しかし、通ったからと言ってその先2年間安全に乗れることを保証しているわけではないのです!
分解してみないとわからないところだからこそ予防整備として漏れていなくてもオーバーホールすることが非常に重要なことです。
整備業界も安売り競争が激しく、ディーラーでさえもこの流れに乗っていると聞きます。
確かにここを分解しなければ車検整備代を安く見せ集客につながるのですが、お客様が安さの代償の意味がわかっているのか?は疑問です。
それに先ほどの安売り競争にはもう一つ危険なことが潜んでいます、整備単価が低いため回転率を上げなければ儲からないのです。そこで”1時間ほどで車検ができます”などうたっているところがあるのです。代車もお貸ししなくても済みますしね。
速く車検をやれるというのはお客様のメリットだけでなく実は整備会社側の都合でもあるんです!
1時間ほどでは間違いなくカップキットの交換を含めた車検整備などは出来ません。(他も部分もよく見なければなりませんし検査もしなければいけません。)
安売りによる弊害は安全走行に危険を及ぼしているのではないのかと危惧します。
当店では基本的に、ホイールシリンダーのオーバーホールは車検整備に含みます、予算の都合上やらない場合は先ほどのお話をしたうえでご納得をしていただき作業を進めさせていただいておりますし、クイックでの車検は通常行いません。(事前に点検を行った場合は除く)
最後に・・・安全に勝るものはありません。