アルファロメオ ジュリエッタ1.4
TCTの警告灯が点灯して走行できなくなったので診て欲しいとのご依頼、しかし動かない状態でしばらく放置してしまい今はエンジンも掛からないとの事。
※TCT:アルファロメオのトランスミッションシステムの名称で、乾式DCTタイプのデュアルクラッチ自動変速システム
自動車保険のロードサービスを使用して搬送するように依頼いたしました。
入庫時はバッテリーが上がってしまいエンジンもかからない完全不動状態で搬送されてきました。
エンジンが掛かっていた時にTCT警告灯が付いていたとの事でしたので、まずは新しいバッテリーを取り付けて故障診断を行うことにします。
バッテリーを付け替えるとTCTの電動油圧ポンプが作動しました、これ自体に何も問題はないのですが少し様子が変です。
いつまでもポンプが回り続けていて、ポンプの作動音もなにか苦しげです。
診断機をつなげてTCTの油圧をモニターするとなんと70barを超えているではありませんか!
本来は55barに達した時点でポンプを止めるシステムなのですがこれは、ポンプをコントロールしている部分に何か異常が起きているといえます。
故障コードもポンプ関するものを検出しています。
セレスピード名ですがTCTのことです。
TCTシステムの前身である、シングルクラッチのころのセレスピードではポンプをコントロールするポンプリレーがよく壊れました。
故障事例 リンク
しかしTCTにはリレーという部品はありません、代わりに使われるのはこのような部品で役割はリレーと同じなのですがパワートランジスタを使用しているようです。
エラーもポンプに関するものを拾っていますし、ドライブユニットのフィードバックもできていないようですのでこの部品を交換します。
交換後はTCTポンプも正常な圧力で停止するようになりトランスミッションの作動に関しても正常な作動を行うようになりました。
やはりこのユニットが原因でTCT不具合を招いたようです。
しかしエンジン・ミッションは正常に作動するようになりましたが、今度はパワーステアリングのエラーが点灯してパワーステアリングが全く作動していません。
診断機で故障コードを確認するとEPS(電動パワーステアリング)ユニットへアクセスできませんしABSユニットはEPSユニットとの通信が出来ないことを訴えてきています。
現代車はお互いのコンピュータユニット間で相互通信しますので何かしらの原因でユニットが消失している場合はほかのユニットが消失しているユニットとの通信不良を訴えてきます。
これはEPSユニット自体が作動していないことが考えられるため、ヒューズなどの電源にかかわる部分の点検を進めることにします。
初めにすべての電源のおおもとになる、バッテリーから出た直後にある60アンペアのヒュージブルリンクを診てみます。
ヒューズのように見た目では判断できませんのでサーキットテスターで導通を確認すると断線しているではありませんか!
60アンペアもあるヒューズが切れているのは一抹の不安がありますが、まずはこのヒュージブルリンクが原因であることは間違いありませんので交換します。
交換後はパワーステアリングの故障コードも消去できステアリングも軽くアシストされるようになりました。
これでホッとしたのですが、まだ違う警告灯が点灯しています。
まだ他のヒューズがダメなのかと点検を進めると、エンジンルーム内のヒューズボックス内にある50アンペアMAXIヒューズが切れていました。
これだけ大きなヒューズがあちこち溶断することはあまり考えられません。
溶断しているヒューズの系統はTCTと関係ありませんのでもしかしたらレスキューに来た業者が、エンジンが掛からなかったことからジャンプしたとお客様がおっしゃっていたので逆接続した可能性が考えられます。
MAXIヒューズも交換してほとんどの警告灯の消去が出来て正常に作動するようになりましたのでいざ走行テストを行おうとしましたが、今度はナビが作動していないことに気が付きました、それにエアコン操作パネルも何も点灯していません。
もしかしてまだ何かヒューズが切れているのかと点検を進めると室内側のヒューズボックスの10アンペアヒューズも切れていました。
ヒューズを交換するとナビもエアコンの操作パネルも作動するようになりました。
やはりここまで複数のヒューズが断線しているとなるとバッテリーへ逆接続したのは間違いありません。
兎に角ここまで行いようやく試運転が出来るようになり正常に走行できることが確認できました。
TCTの不具合だけでなく、バッテリーの逆接続を恐らくした事により様々なヒューズが切れていたため、一時はどうなるかと思いましたが結果的にユニットにダメージが無かった為ほっとした一件でした。
※バッテリーの逆接続は電気回路を破壊するためユニット故障を招く重大故障になることがほとんどですので注意が必要です。