クライスラー イプシロン(312)ご入庫
エアコン(冷房)が効かないとの事。
入庫時は効きが甘いとはいえ冷風は少しは出ていますのでエンジンルームを確認するとコンプレッサーは回っています。
初めに冷媒システムの基本であるガス量の確認から行っていきます。
この車両は500g±40gが規定量ですが80gしか回収できませんでした。
冷媒ガスが完全に足りない状態です、これでは当然冷房は効かないのは当然なので規定のガス量に充填して点検を進めます。
しかし、規定のガス量を入れても冷風はあまり出てきませんので、規定のガス量充填のもとでガス圧力を点検します。
すると、アイドリング状態でほぼ圧縮しておらずエンジン回転を上げてわずかに圧縮圧力が上がる程度であることがわかりました。
この車両のコンプレッサーは定容量タイプで複雑なシステムではないので、単純にコンプレッサー自体での圧縮不良と判断してコンプレッサー交換を行います。
コンプレッサーを交換して圧縮は回復しますが、忘れてはいけないのは当初ガス量が少なかった原因であるガス漏れの修理です。
このモデルの定番であるエキスパンションバルブ周辺がコンプレッサーオイルでびちゃびちゃなのでバルブとオーリングを交換します。
コンプレッサーとエキスパンションバルブを交換して再度既定のガス量を充填します。
充填後はアイドリングでもしっかり圧縮圧力が出て正常に作動するようになりました。
今回の不具合は2つの原因があります。
①エアコンガス不足(ガス漏れ)
②コンプレッサー圧縮力低下
それぞれを修理しないと根本的な修理になりません。
何よりも2つの不具合は密接に関連性があり、エキスパンションバルブ周辺からのガス漏れで、漏れ出たエアコンガスともにコンプレッサーオイルも漏れ出してしまいます。
冷媒回路のオイル量が減少してかつ循環しているガス量も少なくなっていますのでコンプレッサーにオイルがいきわたらなくなり傷がつき圧縮不良に至るという流れになることが考えられます。
もしかしたら冷房が効かないため単純に漏れたエアコンガスだけを補充してコンプレッサーオイルはつぎ足していなかったなんてこともあったのかもしれません。
冷媒システムの故障探求の道筋としては、まずはガス量が正常な量入っているかというところがスタートで、ガス量が適量の上でガス圧力などが正常値を示すかなどの判断で正しい診断を行うことが出来ます。
また、現代車ではオートエアコン車両が増えていますので冷媒システムが正常でもエアミックスでうまく作動できていないなどのパターンもあります。
故障事例 リンク
エアコンの冷媒システムは正常な状態でも少しづつ冷媒ガスは減りますし、コンプレッサーオイルの交換作業は基本的にありませんのでガス調整の際にオイル添加剤などでオイルの補填をすることも重要です。