FIAT500 1.4のご入庫
突然エンジンルームから煙が出たとの事でご連絡。
煙が水蒸気なのか他のものなのかは電話ではわかりませんでしたので、走行せずにロードサービスで搬送してもらうようにお願いしました。
入庫した際には、ガクガクして走行も出来なくなったとの事。
エンジンフードを開けると焦げ臭いにおいがトランスミッション周辺から立ち込めています。
これはクラッチに不具合起きたものと判断できます。
クラッチ交換が必要なことをお伝えして交換作業を開始します。
トランスミッションを下ろしてクラッチを見てみると!
レリーズベアリングが木っ端みじんです!
ベアリングが焼き付いて破損したことで、クラッチの操作が出来なくなったことが原因でした。
煙はクラッチベアリングが焼き付いた際の煙です。
ご覧のようにクラッチ板はまだ溝もあり寿命とは言えませんが、ここまでの作業を行っていますのでセットで交換します。
熱が加わったのか中心部分が変色しています。
クラッチカバーのスプリングもレリーズベアリングが破損したため当たり方がおかしいです。
クラッチフォークにもダメージがありますので交換です。
かなり高温になったのが熱による変色でわかります。
クラッチオーバーホールを行い、デュアロジックのキャリブレーションを実施して作業終了です。
今回の不具合の問題はこの車両の走行距離で僅か6万km台だということです!
この距離でクラッチベアリングが破損してしまうということはあまり考えにくいことなのですが、このシステムでは時折起こる事象となります。
実はこちらの車両は中古車で購入なさったばかりでした。
中古市場では走行距離で車両価値の算出がかなりウエイトを占めるのためこちらのお車も1400ccの当時上位モデルでもあることと走行距離も6万km台と比較的伸びていなかったため中古車販売されていた訳ですが、過去の使用条件によっては走行距離はあまり参考にならないという例です。
デュアロジックは構造上、信号待ちなどの状態ではクラッチを切った状態でスタンバイしています。
クラッチを切る=レリーズベアリングでスプリングを押している という状態ですのでベアリングに非常に負担が掛かるのです。
都市部などの使用で渋滞にはまるような走行を繰り返していると距離が伸びないわりにレリーズベアリングに大きな負担が掛かっていることになるのです。
しかし、デュアロジックはクラッチ操作もメカがしているため不具合になかなか気が付くことが出来ないため突然不具合が起きたようになります。
それとデュアロジックはマニュアルトランスミッションからの派生システムでクラッチに関してはマニュアル車と同様の部品をそのまま使用しています。
本来では負担が大きくなるデュアロジックではベアリングの容量などを上げるべきですが、FIATでは日本的な考えがなかったようです。
郊外や地方での使用では10万kmを超えてもまだ大丈夫な事例もたくさんありますが、どこで使われていたかわからない中古で購入なさったお車では時折このような不具合事例は当店でも多々起こっております。
クラッチは大きなくくりでは消耗品ですので、ある程度割り切り交換をされることも視野に入れて中古車購入するのも不具合を未然に防ぐための一つの手かもしれません。
すでに乗られている方でも下記リンクの事例の様に異音が出た場合は早急に点検を受けるようにしてください。