トヨタ ヴィッツ(KSP90)のご入庫
車検でのご入庫でしたが、エアコンを掛けたりバックしようとすると明らかにエンジン回転が安定せず時折エンスト寸前まで回転が落ち込むのがわかりました。
このような症状でまず点検しなければいけないのがスロットルバルブの状態です。
現代の電子制御式スロットルバルブのほとんどはアイドリング回転制御をスロットルバルブの開度でコントロールしています。
アイドリング中はスロットルバルブは閉じていてわずかな隙間から通り抜ける吸入空気がアイドリング回転となるのです。
しかし、スロットルバルブは構造上必ずよごれてしまいます。拡大図
このわずかなすき間に汚れが付着すると吸入空気量が少なくなって(空気が通りづらくなって)アイドリング回転が下がってしまいます。
アイドリングが下がるとエンジンは安定しませんので、スロットルバルブを少し開けて回転数を上げて目標回転数に合わせるように制御を行います。
汚れるたびこの制御を繰り返してくれるためエンジン回転に不調を感じることなくユーザーは長期間乗ることが出来ます。
ですが、この制御にも限界が訪れます。
制御範囲を超えると、ギアにシフトした瞬間やエアコンのコンプレッサーが回りエンジン回転数が落ち込んだ際に制御が追いつかなくなり回転数が上がったり下がったりします最悪は、エンストを引き起こします。
その状態をモニターしたのが下記の状態で、赤い線がエンジン回転数を表しています。
ISCとはアイドルスピードコントロールの略でまさにこの指示信号でスロットル開度をコントロールしてアイドリングを調整しているのです。
制御範囲を超えた状態では、ISCを指示しても実際のエンジン回転数は追いつかずエンストしそうになりエンストになりそうなのを感知して慌てて回転数を上げるというぐちゃぐちゃの制御になるためエンジン回転が不安定で大変不快な状態になるのです。
エンジン回転数(赤線)がこれだけ上下(700~1200回転)するということは乗っていてもかなり気になるレベルです。
スロットルバルブを洗浄後 アイドリングは2000回転近くまで上がりました。
元々アイドリングは800回転程度ですので1200回転分汚れによりスロットルバルブ開度を開けてコントロールしていたというわけです。
コンピューターをリセットして正規のアイドル回転数になりました。
洗浄後のエンジン回転数の変化は以下のようになりました。
ISCが変動しているところがエアコンやギアをシフトしたタイミングですがISCの動きに対してエンジン回転数は穏やかに変動している(800~1000回転)のがお分かりになると思います。
エンジン回転が車体に伝わるほど落ち込んだり、エンストするということは現代の車両では正常な状態ではありません。
しかし自動車の制御が優秀でエンストなどに至らないため乗られているお客様は、おかしいと思わずに乗られていることが多いものです。
現代車では基本的にどこのメーカーでも同様のシステムを採用しており、必ず汚れる部分ですのでスロットルバルブの定期的な洗浄で未然に防ぐようにしてください。