いすゞ ベレット1800GTのご入庫
エンジンの調子が悪く、高回転も吹けないとの事
走行してみるとアクセルを踏み込んでもかぶった感じでエンジンがふけ上がらず進みません。
この時代のお車は、キャブレータを使用していますので点検していきます。
G180エンジン元々のオリジナルではSUキャブレーターという可変ベンチュリータイプのキャブレーターですが、後付交換でソレックスのサイドドラフトタイプに換装しています。
高回転域でのカブリ症状ですのでジェットに異常が無いか確認してみます。
すると、ジェットブロックがゆるゆるに緩んでしまっていました。
この部分は、空気とガソリンを混ぜ合わせて供給する部分ですので緩んでしまっていれば適切な燃料を供給できずに不具合症状を発生させます。
締め付けて走行テストを行うと高回転域での不具合は解消されました、しかしアイドリングが定まらず安定しません。
アイドリングはミクスチャスクリューで調整しますが、そもそもキャブレーター同士の同調も取れていないし決まりません。
これはキャブレター以外にも何か不具合が隠れています。
さらに点検を進めていくとエンジンヘッドとインテークマニホールド間でエアの吸い込みがあることが確認できました。
この部分で吸い込みがあれば、負圧で空気が吸い込まれてしまう為、混合気が薄まってしまいます。
ガスケットを交換することになりましたが、昭和47年式のお車部品はすでに製造廃止です。
このエンジンは、ターンフロータイプでインテークとエキゾーストが同じ側にあり排気の熱も掛かるためガスケット作成を簡単に行うことが出来ません。
困りましたがあちらこちらに問い合わせて何とかガスケットを入手して交換に取り掛かることが出来ました。
マニホールドを取り外してガスケットを見てみると、3・4番のインテークに吹き抜けた跡があります。ここから空気が吸われていたのは間違いなさそうです。
面を整えて新しいガスケットでくみ上げます。
次にキャブレーターの調整です。
キャブレータ自体はアナログなもので特別難しいものではありませんので、基本に忠実に調整していきます。
まずは、燃圧ですが後付の電磁ポンプが付いていますので基準になる燃圧になっているか確認します。
こちらのお車、レギュレーターにメーターが付いているので簡単に確認できましたが問題のないレベルでOKでした。
※燃圧は高すぎても低すぎても基準になるフロート室の高さが狂ってしまいますので、とても重要です。
次はキャブレーター内の燃料フロートレベルを点検します。
燃料のレベル(油面高さ)は非常に重要で空燃比調整の基本となります。
レベルゲージで測定しますが基準のレベルに合わせるのはもちろんのこと大切なのは2基のキャブレーターが同様になっていることです。
フロートレベルを調整してキャブレーターの基本は整いました、もちろんエンジンの点火タイミング・バルブクリアランス等が正常なことが大前提です。
十分暖機された後に、2基のキャブレーターの同調を合わせます。
※同調とはアクセルを踏んだ際、2基のキャブレターが同じタイミングでスロットルバルブを開くように調整することです。
次にアイドリングの燃料の濃さを調整するためにアイドルミクスチャースクリューでそれぞれのシリンダーを調整していきます。
走行テストを行い全域でのふけ上がりなどを点検して終了です。
キャブレーターの場合よくジェットをいじるといわれていますがあくまでも基本の調整を行ったうえで交換していくものです。
ジェット:ガソリンや空気が通る通路で大きさを変えることで通路の大きさが変わり燃料や空気の通過量で特性を変化させるもの
エアの吸い込みも無くなりアイドリングも安定しましたし高回転域でもふけ上がりが良くなりました。
キャブレーターだから現代の車に比べ調子が悪いのが当たり前と思われている方が多いのですが、基本に忠実に調整や整備を行っていけば現代車と遜色ない走りをするのが正常です。
今回の様なエアの吸い込みはコンピュータ車でも同様に不具合を引き起こします。
不具合事例国産車リンク①
不具合事例輸入車リンク②
キャブレーター搭載車は、何やら扱いが難しいし調子も現代の自動車に比べて悪いように思われることが多いのですが、この時代には車の基本は出来上がっていますので走行自体はさほど現代の自動車と変わりはないと思います。
現代車のような快適装備や安全性・環境負荷などの点で技術的に未完成だっただけですので、純粋に自動車の運転を楽しんだりDIYでいじるには旧車はとても良い時代の自動車だと思います。