ニッサン ムラーノ(TZ51)のご入庫
2.5L 4気筒エンジン搭載のこちらのお車、”エンジン掛け初めの音が前よりも大きくなった気がする”との事です。
確かに掛け始めにガラガラと雑音が聞こえます。
音の原因は、オルタネータープーリーのクラッチ故障です。
クラッチが固着(ワンウェイクラッチが効かない)したためベルトの張力変動を吸収できずバタついて異音を発生させていたのです。
オルタネータをリビルト品に交換して、ベルトテンショナーと劣化したベルトも同時に交換します。
※プーリークラッチ単体での交換も可能ですが、プーリーの価格が比較的高いことと走行距離からオルタネーター本体の性能も落ちてくることも含めてリビルト品でのアッセンブリー交換を選択しました。
プーリークラッチ
ではなぜこのようなプーリーを使用しなければならないのでしょうか?
このエンジンは、1本のベルトで全ての補器類を駆動するサーペンタインと呼ばれるシステムが採用されています。
1本で駆動させるためベルトの長さは非常に長いものになりこのお車でも2m以上の長さです。
オートテンショナー
ここまで長いベルトの張りを調整するには今までの固定式のテンショナーでは難しいためオートテンショナーと呼ばれるバネの内蔵されたテンショナーを使用してベルトの張力を常に一定にできるようになっています。
ベルトの張力変動は、ほとんどこのオートテンショナーで吸収できます。
しかし、昨今のお車は電装部品の増加に伴いオルタネーター(発電機)の容量が増えました。容量が増えたということは質量自体も大きくなった(重くなった)のです。
アクセルのON/OFFで、重くなったオルタネータは回り続けようとする慣性モーメント(回り続けようとする力)が強く掛かりベルトに大きな張力変動を与えてしまいます。
そこで、オルタネーターのプーリーにワンウェイクラッチを内蔵することでアクセルOFF時にクラッチが切れてオルタネーターの慣性モーメントを切り離すことでベルトにかかる負担を減少させています。
今回のようにクラッチが固着してしまうと常にオルタネーターの質量が掛かり、アクセルのON/OFFだけでなく、エンジン始動時にも変動した力が掛かりベルトがバタついてしまいます。
こうなるとベルト自体の寿命を縮めてしまいますし、かなり大きな異音を発生させることもあります。
日産以外の車両でも、多く採用されているシステムです、エンジンから変な音がするようになったら点検を受けるようにしてください。