ニッサン NV350(キャラバン)
前回紹介した、フロントブレーキ周りに続き今回はリヤブレーキの整備を紹介いたします。
こちらのお車は、リヤブレーキはドラムブレーキタイプです。
ドラムの中でブレーキシューが広がることでブレーキを効かせます。
かぶっているドラムはこのような形
ドラムブレーキも、ディスクブレーキ同様に油圧と機械部分に分かれます。
油圧部分のメンテナンスとしては、ホイールシリンダーのオーバーホールがあります。
ペダルを踏むと油圧が発生してこのホイールシリンダーに油圧が伝わり広がります。
広がることでブレーキシューを左右に押し広げてドラムの中で突っ張ることでブレーキを効かせます。
シリンダーは油圧システムの末端になりますので吸湿性のあるブレーキフルードは水分を含んでしまうので錆びてトラブルを起こすことが非常に多いので点検・交換は必須項目です。
機械部分のトラブルとしては、ブレーキパッド同様ブレーキシューに張り付けてある摩擦材(ライニング)の残量の点検が必要です。
残量が少なければもちろん交換です。
漏れやパッド・シュー残量少のトラブルの陰に隠れて、意外と多いのがドラムとシューとの隙間調整の不良です。
この車両のタイプはリーディングトレーディングタイプで乗用車ではオーソドックスな構造で、自動調整の隙間調整機能が付いています。
これは、サイドブレーキを引いて、ある一定以上ドラム内部のレバーが引かれる(ライニングが減り隙間が広がった)とギザギザの山を乗り越えて、ネジを伸ばして隙間を埋めるような構造になっています。
自動調整なんだから調整が不要なのでは?と思いますが、ここに落とし穴があります。
自動調整はあくまでも大雑把な調整で、細かな調整はできないのです。ベストな隙間に調整するためにはあくまでも整備士が手動で調整しなければなりません。調整が悪ければブレーキのフィーリングに影響を及ぼします。
ブレーキの制動力とブレーキの効き初めのタッチは別物です。
例えば、フロントディスク リヤドラムブレーキの場合で、リヤブレーキの隙間が大きかった(広い)としましょう。
ブレーキペダルを踏んだ瞬間、フロントブレーキはディスクブレーキで隙間はほとんどありませんのですぐに効き始めるのですがリヤブレーキは隙間があるためわずかな間、まだブレーキが効いていない瞬間があります。
すると、一瞬ですが前ブレーキだけが先に効いて車体が前傾姿勢になります。
前のめりになってからリヤブレーキが効くようになるので運転している人は車体の不安定な状態をブレーキが効かないと表現するのです。
実際、リヤブレーキの隙間をベストに調整すると前後の効き初めがほぼ同時になるため車体が安定して沈み込みます。
※もともと、前ブレーキのほうが制動力を必要とするため設計上前のめりになるのですが、この話はブレーキ効き初めのわずかな姿勢変化のことを話しています。
※足回りにヘタリが出ているとこのような姿勢の不安定さも顕著に現れます、ブレーキ以外にも点検が必要な場合もあります。
しかし、このような症状を”ブレーキが効かない”と訴えるユーザーに対して、車検でのブレーキ検査では問題なかったと片づけてしまうお店が多いのです。
それは車検の継続検査でのブレーキ測定は、ブレーキペダルを最大限に踏み込んだ状態での制動力測定(最大制動力測定)であるため、効き始めの制動力などは全く測定はしないのです。
確かにお店側のブレーキは効いていると言うことは間違いはないのですが、お客様の言われているブレーキのフィーリングへの不満は、食い違ったままになってしまうのです。
大雑把な自動調整機能ではこのシビアな隙間調整はできませんので、整備士が手動できっちり合わせた上でテスト走行を行って実際の走行状態でフィーリングを含めてブレーキを診てあげることが大切なことです。
本来、このようなことも含めて車検整備や点検なのですが・・・
1時間ぐらいで出来る車検を売りにしているところがありますが、その時間でここまでやれるのかは・・・
ご想像にお任せします。