スズキ ワゴンR RR-DI(MH21S)のご入庫
ご用命は”何かふけ上がりが悪い気がする” ”加速が悪い” ”エンストするときがある”との事。
確かにアイドリングが若干 不安定ですが走行できないほどではありません。診断機での故障コード読み出しを行いましたが特に何も検出していません。
こちらのお車、ワゴンRのターボ車ですがほんのわずかな期間しか製造していないRR-DIというグレードで直噴ターボ搭載エンジンです。
どのメーカーの直噴エンジンも初めのうちはよいのですが、どうしても通常のエンジン(インテーク噴射)に比べ内部にスス状の汚れが多く付着してエンジン不調を引き起こすことがとても多いです。
このお車も以前、WAKO'S RECSを施工していただいてしばらくは調子が良かったそうです。
しかし、施工後あまりにも早く不調が再発しているようなので他にも原因がありそうです。
先ほど診断機を繋ぎ故障コードを読みましたが、さらにエンジン各部からのセンサーの数値を見てみます。
すると、ひとつ気になる数値があります!
それは、空燃比補正値が-20%以上を検出しています、補正なのでコンピューターは混合気が濃すぎる(ガソリンが多い)ので一生懸命薄くしようとマイナス側にしている状態です。
(空燃比とは、エンジンでガソリンを燃やすために適正な濃さを作るのですがその濃さの比率を空燃比と呼びます。)
何かが原因で空燃比が濃い状態(ガソリンが多い)になっている可能性があるので点検を進めます。
直噴エンジンの場合、タンクからエンジン側に送る1次燃料ポンプと、エンジン内部に高圧で噴射するための2次ポンプ(直噴ポンプ)があります。
直噴ポンプの圧力を点検すると6Mpa(メガパスカル)以上あるので正常な数値でしたが、エンジンを停止するとその圧力は10秒ほどでスーと下がってしまいました。(1次側は正常)
この手の部品はある程度圧力を保持する仕組みなのですが保持が出来ていないようです。
スズキのサービスマニュアルで高圧側の残圧保持時間の基準値を調べたのですが特に規定はないようです。
仕方ありませんので残圧保持不良と仮定して点検を進めることにします。
残圧保持ができない大きな理由としてはガソリンがどこかに漏れだしてしまっているということです。
もちろん外部に漏れていたら大変なことです、しかし外には漏れていませんのでどこかの内部リークを考えるのですが直噴ポンプがカムシャフトで駆動していますのでその付近からの内部漏れが濃厚になってきました。
エンジンオイルの臭いをかぐと替えたばかりという割にガソリン臭がきついです!
排気ガス測定に使用するCO/HCテスターでオイルレベルゲージからブローバイガスの濃度を測定します。
HC(ガソリン)濃度が振り切ってしまいました。
直噴ポンプからの内部リークでエンジンオイルにガソリンが混入し、ガソリン濃度の高いブローバイガスがエンジンに吸入されたため空燃比濃い(リッチ)状態になりそれを補正しようと空燃比補正マイナス制御に陥ってしまっていたのです。
お客様にご説明すると、確かにエンジンオイル交換直後は調子が良かったのだが何千kmか走行していくうちに調子がどんどん悪くなっていったそうです。
エンジンオイルへのガソリン希釈が進めば進むほど調子が悪くなっていくこと(空燃比が悪くなり補正を上回ってしまう)はうなずけます。
直噴ポンプの交換で不具合は解消しました。
トラブルシュートはエンジンオイルの臭いを嗅げばすぐにわかったのかもしれませんが、テスター等での測定による数値の裏付けで故障原因の確定に結び付けなければなりませんので、交換・修理作業よりも故障探求のほうが時間が掛かるものです。