トヨタ カローラバン(KE74)
前回エンジンの故障修理についてご案内しましたが、他に重要な部分で車検を合格できない故障がありました。
それはブレーキの引きずりです。
左前の車輪がブレーキが掛かったままで手では回りません、ブレーキキャリパーのピストンが固着したことが原因です。
他の部分もメンテナンスを行った形跡がない事から、ブレーキ系統のオーバーホールを行うことになりました。
まずはブレーキマスターシリンダーです。
ここはブレーキペダルで押して油圧を発生させ、各車輪に油圧を送るポンプの役目をします。
中には何か大きなゴミが出てきました。精密なシリンダー内部には有ってはいけないものです。
幸いシリンダー内部に錆は発生していなかったので、新しいインナーキットでくみ上げます。
次に後輪のブレーキです。
ドラムブレーキでホイールシリンダーからブレーキフルードが漏れてしまっていた事と、サビで半固着状態になっていました。
シリンダーのサビが酷いので新しいホイールシリンダーに交換します。
ブレーキシューの残量もわずかですのでこちらも交換します。
もう一つ忘れてはならないのですが後輪を駆動するアクスルシャフトのシールが悪くデフオイルが漏れ出しているのでオイルシールも交換します。
漏れを放置しているとドラム内部がデフオイルだらけになりブレーキが効かなくなってしまいます。
シールが正常な状態ならばベアリングにデフオイルは付着しません。
引きずっていたディスクキャリパーをオーバーホールします。
ブレーキパッドも摩耗していたので新しいものに交換。
ブレーキホースも劣化によるヒビが出始めていたのですべて交換します。
ここまで行うことでブレーキの油圧系統すべてのオーバーホールが完成したわけです。
このように整備内容を説明すると決して難しい作業ではありませんが、今回ディーラーでは手に負えなかった理由があります。
それは今回交換した部品の半分以上は自動車メーカーでは製造廃止で入手困難(不能)であったことです。※社外品も国内欠品
ディーラーでは製造廃止になった部品の入手が出来なければ整備もおのずとできませんので断ります。
当店では錆びて使用できなかった金属部品は中古品を使用したり、製造廃止部品はデットストック品や海外から取り寄せることで何とか入手して整備を行うことができました。
トヨタ車のかつカローラというメジャーな車両であったことが幸いしました。
残念ながらここまで部品入手が困難な作業になると、ほとんどの整備工場では断られることでしょう。
しかし、このお車を新車から30年以上も乗り続け、仕事で今でも使ってきたお客様の気持ちがあるからこそ何とかしてあげたいと思うものです。
実作業よりも部品探しの方が困難なこのような作業であったとしても、最後にお客様に喜んでもらえたことで報われました。
ある程度年数が経った車両や、少し特殊な車両では販売ディーラーでは手に負えなくなるという話はよく耳にしますが断られてあきらめるだけでなく、ユーザーサイドでも店舗探しをすることで整備を行ってもらえる会社や整備士と出会えるかもしれません。
次回、整備・故障修理番外編 つづく