アルファロメオ スパイダー(916)前編ではクラッチまわりの整備をご紹介しました。
今回はエンジン廻りの不調の整備を進めます。
不具合として
・エンジンからの異音
・加速が悪い
・アイドリング時回転がハンチングのように波打つ
この3点が不調の症状ですがまずはあまりにひどい異音の修理から始めます。
エンジンの異音はジーゼルエンジンの様にガラガラ常に騒がしい異音が出ているのですが音の出どころはバルブ付近(エンジン上部)です。
この2.0ツインスパークエンジンでこの付近からの異音がよく出るのはタイミングバリエータが原因であることが多く、役割はインテークカムシャフトに付けられていてバルブタイミングをずらす可変バルブ機構になります。
カムシャフトについている部品ですのでタイミングベルトを取り外したうえでの交換になります。
今回はかなりの異音が出ており金属同士で激しく当たり摩耗していることが考えられるためアッセンブリーで交換を行いました。
異音が出ておらず予防的に行うのでしたらインナーキットのみでも可能です。
新品と比べるとよくわかりますがシールワッシャーが段付き摩耗しています、スプリングが経たったりワッシャーの気密が悪くなると油圧が保持できなくなり中の歯車が暴れて異音を発生させます。
年数や距離が伸びた車両でのタイミングベルト交換の際には同時に行っておきたいメンテナンスにもなります。
次にバリエータ交換作業のためタイミングベルトを外しましたのでベルトの交換も行います。
しかしお預かりの際、お客様から他店で整備をしてもらった際バランサーベルトを取り外したことを伺いました。
理由はエンジンのふけ上がりが悪く他店で相談したところ、”バランサーシャフトはフリクションロスになりふけ上がりの妨げになる”との理由で外されたそうです。
バランサーシャフトとはエンジンの固有振動を不均等なシャフトを回すことで振動を打ち消しあう役割をします。
振動軽減の役割が主なものですので、確かにシャフト自体も重量がありますのでフリクションを軽減したいのであれば無駄という考え方も出来ます。
しかし、自動車メーカーは莫大な開発費とコスト削減の中でエンジン開発をおこなっています。バランサーシャフト系の部品点数はかなり多くコストが掛かるにもかかわらず組み込むことを決断したということに何か大きな意味があるのではないでしょうか?
私個人としては安易にこのような整備をすることに違和感を感じます。
もしかしたら振動を軽減しなければ重大な破損が起きてしまうなんてこともあるのかもしれません。
※1.6Lツインスパークにはバランサーシャフトは採用されていません。理由はコストなどの問題なのかは不明です。
当店ではタイミングベルトとバランサーベルトをSSTを使用して正確にバルブタイミングを調整して組み付けました。
ここまでの作業で、異音の発生は解消しましたし正確にバルブタイミングも合わせた状態になりました。
いよいよ走行テストを行いますが、エンジン回転は全体にもっさりして4000回転以上はふけ上がりが悪く確実に不調の状態です。
バランサーベルトを付けたからふけ上がらないというレベルではありません。
またアイドリングも回転が波打って安定していません。
エンジンの基本をしっかり調整したうえでの不調ですので、原因がほかにあることがはっきり分かりました。