ニッサン セレナ(C25)のご入庫
ご用命は、”10万km超えているのでCVTフルードの交換をしてもらいたい”との事、ただしお預かりの際”シフトレバーをDやRレンジにする時のショックが大きくて気になる”との事でした。
確認するとDやRレンジに入れると”ドンッ!”と激しいショックがあります。
もともとDもしくはRレンジにシフトしたときには、セレクトショックと呼ばれるエンジンの動力がトランスミッションに伝わる際のショックがあります。
しかし、こちらのお車の場合明らかにセレクトショックのレベルが、衝撃に近いショックで正常の範囲を超えていました。
お客様には、CVTフルードの劣化だけで起きているのではなく、ミッション自体に何か故障が起きている可能性があることをご説明して預かりました。
まずは、フルード量を確認した後診断機を使用して電気的に故障を検出していないかを確認します。
すると、トルクコンバーターに関係する故障を検出しました。
この故障コードP0740は、ロックアップクラッチと呼ばれる部分の油圧を制御するソレノイドの電気的な故障です。
走行中のデーターモニターでソレノイドにかかる電流を見てみるとソレノイドを動かす指示信号が出ているのですがソレノイド自体が全く反応していません。
コネクターからソレノイドの抵抗値を測定してみると基準値3~9Ωに対して 測定値4.5kΩに達していました。これでは抵抗が大きすぎてソレノイドは作動しません。
ソレノイドの故障が原因なのは確定です、しかしソレノイドは単体での部品供給が無いためソレノイドが含まれるコントロールバルブアッセンブリーでの交換になってしまいました。
※単体供給されている場合での交換事例 リンク
※コントロールバルブ:電気的にソレノイドを動かし油路を切り替えてCVTやAT本体を制御する部品
現在はコンピューター基盤も搭載しているモデルもあります。
コントロールバルブを交換するために、オイルパンを外してみると恐らく一度も交換されていなかったのでしょう、鉄粉吸着用のマグネットに砂鉄状の不純物がびっしり付着していました。
オイルパンのフルードを吸い上げるのにストレーナーと呼ばれる細かい網で不純物をキャッチします。
この網目の細かさがいかに不純物の流入を防ぎたいのかお分かりになると思います。
円筒状のものがソレノイドです。それぞれが油路を切り替える役目を担っています。
余談ですが、CVTは金属ベルトを使用してプーリーの比率を変化することで無段変速を可能にしているのですが、普段お目にかかれない金属ベルトは、コントロールバルブを取り外すと一部見ることが出来ます。
コントロールバルブ交換後、本来の目的であったCVTフルードを交換します。
いくらオイルパンを外してフルードが抜けたとしてもそれは全容量の半分がいいところですご覧のように真っ黒のCVTFが出てきました。
14L使用して透明度のある状態まで回復しました。
最後に、診断機を使いCVTFの劣化度をリセットします。
※劣化度:CVTフルード温度を数値化して演算することで劣化度として置き換える
交換後のロックアップソレノイドの動作
指示信号に対してリニアにソレノイドが反応しています。
劣化度のリセットはもちろんほぼ新油に入れ変わった状態でなければ意味がありません、しっかりした交換を行うことが大前提です。リセット行為だけを行って機械をごまかしてはいけないということです。
全て交換後、セレクトショックも改善したことは当然ながら、ロックアップクラッチの制御が正常になってシャープな変速になりました。
今後は、悪かった燃費も改善されていくでしょう。
今回の故障は、メーターに警告灯のようなものが点灯しなかったためお客様自身ではフルード劣化によるセレクトショック大だと思われていました。
※実際にはスポーツモードランプが点灯しない状態でした。しかし点灯しないものはお客様は気が付かないものです。
しかし、私たちプロからすれば明らかに故障レベルであることは一目瞭然の事例です。
このように故障に気が付かず乗られている事例も多々あります、実はこちらのお車他店にて車検を受けたばかりだったとのこと。
セレクトショックの異常に関して何の指摘もなかったそうです。
お店選びも大切なことをお話しいたしました。