栃木県宇都宮市の整備工場
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ご注意

ブログ内の整備・修理等各記事の作業内容や作業方法のご質問にはお答えできません。 また、作業料金についても車両を当社まで入庫いただき、実際に見させていただいてからのお見積りとなります。 概算の金額についても電話やメールではお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

セレスピード・デュアロジック フィアット

FIAT500 デュアロジック・クラッチ重複不具合

FIAT500のご入庫

エンジンが掛からないしギアも1速に入りっぱなしで全然動かせないとの事で搬送されました。

御入庫時、エンジンも掛からずギアが1速に入ったまま抜けないため前輪が回らず搬送されました。

こちらのお車はデュアロジックと呼ばれるAMTタイプの自動変速ミッションを搭載しています。

自動変速といってもマニュアルトランスミッションをデュアロジックが操作するような仕組みになっていますので、一般的なオートマチックトランスミッションとは構造は違います。

 

では、何が起こっているのでしょう。

基本的にデュアロジックはマニュアル車と同様にギアを1速もしくはリバースに入れた状態で駐車します。

次に乗り込む際は運転席のドアを開けるとデュアロジック油圧ポンプが作動して油圧を立ち上げてスタンバイします。

キーを回すとデュアロジックはスタンバイしている油圧を利用してクラッチを切って1速もしくはリバースに噛みこんだギアをニュートラルに戻してスターターモーターが回るようにします。

このような一連の流れが始動時に自動的に行われます。

しかしこちらのお車運転席のドアを開けてもデュアロジックの電動油圧ポンプの作動音がしません。

油圧が無いのでギアが噛みこんだままになってしまっているためスターターモーターを回さないように制御が掛かってしまっているのです。

診断機でモニターしてもポンプは作動せず油圧が立ち上がらない状態ですし、油圧ポンプに電源は掛かっているのでどうやらポンプ自体が壊れて回らなくなったようです。

ポンプ自体を交換すれば油圧が発生して不具合は解消しそうです。

 

しかし、こちらお客様からは以前からギア抜けなどの不具合症状が出始めていたためご相談を受けていた最中での故障でした。

ご相談を受けていた時に起きていた症状を並べると以下の3点となります。
①走行中ギアが抜けた時がある。減速時
②朝一のポンプの作動時間が長い
③エンジンの音が大きい

このような症状がすでに表れていたため今後行う整備方針を考えていました。

①と②の症状で原因になることが多いのは油圧を貯めるアキュムレーターの劣化です。

蓄圧量が少なくなったことが原因で減速時の矢継ぎ早なギアチェンジに油圧がついていけなくなりシフト操作が出来ずギアが抜けたり、蓄圧するのに時間が掛かるため朝一のポンプ作動時間が長くなったものとアキュムレーターの劣化と考えられます。

③の症状はエンジンからの音ではなくクラッチのレリーズベアリングからの異音が大きくなっていたものでこれに関してはクラッチオーバーホールをしなければならないとご説明していました。
同様故障事例リンク

上記の対策作業としてはクラッチオーバーホールとアキュムレーターの交換を行うことを進めようとしていた矢先で、今度はポンプが焼き付いてしまった訳です。

ポンプも壊れてしまった状況も追加になったので、どのような修理方法で進めていかなければならないか再度考え直さなければいけなくなりました。

 

ポンプが焼き付いてしまった原因のひとつはアキュムレーターの劣化です。

蓄圧能力が低下したため、より長く頻繁にポンプが作動したことが大きな引き金になったと思われますので、電動油圧ポンプとアキュムレーターの交換は必須になります。 

しかし、この2点の部品を単体で交換するとかなり高額になってしまうのと、デュアロジック本体も相当劣化していますので単体部品代とアッセンブリ部品代の差額を考えるとデュアロジックユニットアッセンブリーで交換してしまったほうが今後の不具合をかなり回避できるということを提案しました。

また、クラッチもベアリングから異音が出ている以上焼き付くのは時間の問題ですのでクラッチオーバーホールも同時に行う必要があることをご説明いたしました。

デュアロジックユニットとクラッチの交換ですのでかなりの高額修理になってしまいますのでよく考えていただき、結果お客様から承諾を得て作業に着手することになりました。

まずはミッションを取り外してクラッチを交換します。

クラッチ板も溝が無くリベットがもうすぐ出るところですので摩耗限度でした。

 

異音の原因はこのレリーズベアリングで案の定ゴロゴロ音が出ていて焼き付くのは時間の問題でした。

 

ミッションの背中に乗っかっているデュアロジックユニットASSYを新品に交換します。

 

ユニットにはアキュムレーターも電動ポンプも搭載されています。

 

ポンプが焼き付いたので同時にダメージを受けているポンプリレーも交換。

50アンペアリレーでかなりの大電流が流れるリレーですが、やはり端子は黒く焦げかかりかなりの電流が流れていたのを物語っています。

 

交換後は診断機を使用してデュアロジック/クラッチともに操作回数をリセットしたのちにキャリブレーションを行います。

デュアロジックコンピューターにデュアロジックの操作回数などメモリーされていますので新品に交換した際はリセットします。

 

とかく故障が多いシステムの代名詞となるデュアロジックですが、このようにユニットとクラッチを同時に交換しなければならない状況に陥ることもあることがお分かりになったかと思います。

しかしクラッチに関してはブレーキと同様に摩耗などが進めば定期的に交換が必要な部位ですので、必ず行う交換箇所とも言えます。
※大きなくくりではすべての部品に当てはまるのですが・・・

デュアロジックユニットは様々な部品の集合体で定期的に交換する部品とは言えないのですが、アキュムレーターの様に劣化して性能低下することで故障に繋がる部品もありますのでやはりどこかのタイミングでは部分的にでも交換が必要になる個所はあります。

メンテナンスとして必要な部分と、修理として必要なところが混在して不具合症状として現れるので単純に壊れやすいと思われてしまいますが、2ペダルの自動変速で走行できる割に効率的ですし、機械としても非常にシンプル構造ですので整備を行う側からするとメンテナンスを必要とすることさえ理解していればそんなに悪いシステムではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

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