BMW X3(F25)
走行中突然エンジンが止まってしまいクランキングし直してもエンジンが掛からないとのご連絡
クランキングは勢いよく出来るようなのでバッテリーなどには問題なさそうです。
電話でいろいろ指示して試しましたが掛からないようなのでレスキューを手配することになりました。
しばらくして積載車で運ばれてきましたが、その時には正常にエンジンが掛かるようになっていました。
診断機で故障コードを読み出してみると
・11A002 高圧燃料妥当性:圧力が低すぎる
・481B01 制御電圧EPKSが低すぎます
このような故障コードを検出しました。
どちらも燃料に関するトラブルですのでエンジンにうまく燃料が供給できないことでのトラブルのようです。
次に故障コードを読み解いていきます。
このエンジンは直噴エンジンですので高圧燃料ポンプがありその高圧燃料圧力が低いという故障コードをまず拾っています。
次にEPKSの制御電圧のエラーですがEPKSとは何なのでしょう?
EPKSはBMWの呼び名でフューエルポンプコントロールモジュールのことで燃料タンク内の燃料ポンプをコントロールする役目を担っています。
燃料タンク内の燃料ポンプでエンジン側の高圧燃料ポンプに燃料を送りますので、ここがうまく燃料を送れなくなれば高圧燃料圧力も低くなってしまいますので燃料タンク側の燃料ポンプの作動に問題があると判断するのが有力です。
EPKSは後席の座面下に取り付けられています。
エンジンが掛かる状態でEPKSをしばらく観察しているとエンジンがすとんと止まってしまいました。
その時EPKSは触れないほど高温になりタンク内の燃料ポンプの作動音もなくなりました。7湯
ここまで高温になるのはおかしいです、内部基盤の故障で高温になりEPKSが作動できなくなる可能性がありますのでEPKSを冷やしてみるとやはりエンジンが掛かるようになりました。
EPKSが熱くなるとエンジンは止まってしまい冷やすと掛かるようになる状態ですので間違いなくEPKSの故障と判断することが出来ました。
新しいEPKSに交換して作動を確認しようとすると今度は新たな故障コードが出てきました。
コーディングが出来ていないと車両側が訴えてきています。
どうやらこの部品の交換にはコーディングが必要で診断機を使用して新しいEPKSに交換したというデーターの移植のような作業を行います。
この作業は診断機が無いと不可能です。
コーディング作業も完了するとEPKSもわずかに温かくなりますが触れないほどの熱さにならずエンストも解消しました。
故障したEPKSを分解してみると基盤の土台は分厚いアルミ材ですので、ヒートシンクを兼ねているのではないかと思われます。
基板上の部品が故障により発熱量が大きくなりすぎ、ヒートシンクで熱を捨てる限界を超えてしまい作動不良に至り燃料ポンプの電流コントロールが出来なくなったと思われます。
しかしこのような部品ひとつも交換するのにコーディングが必要になること自体が非常に直し辛いとつくづく感じる時代になりました。
今回は当社の診断機でコーディングすることが出来ましたが、対応したものが無い場合は原因がわかり部品交換が出来たとしてもコーディングするためだけに純正診断機を持つディーラーのお世話にならなければなりません。
故障探求よりも非常に頭の痛い問題です。