ダイハツ ソニカのご入庫
エンジンに関する修理のことでご相談にいらしたユーザー、当店ご来店前にディーラーでもご相談済みとの事。
ユーザーが気になる点として以下のことだそうです
・エンジンからのオイル漏れ
エンジンヘッドカバー周辺及びフロントカバー周辺(ヘッドガスケットかも)
・エンジンオイル量の減少(3000㎞走行して1L位減少する)
このことをディーラーにて相談して見積もりを出してもらったそうです。
走行距離は9万㎞台で致命的なダメージは起きていませんので、上記不具合の解消と今後の予防的な要素をユーザーが求めていることはわかりました。
ディーラーでの見積でどのようなメニューを提案したのか拝見して考察してみます。
内容的にはエンジンヘッドガスケットの交換とターボチャージャーの交換の見積もりのようです。
確かにフロントカバーの漏れですとヘッドを外すことでフロントカバーも外すためこの部分のシール交換で解消しそうですし、オイル量の減少に関してはターボチャージャーの交換が対策のようで的外れではなさそうです。
しかし気になる点があります。
それはせっかくヘッドを外したのにヘッドのオーバーホールはどうもやらないようで、単純にヘッドガスケットの交換のみやるようです。
それにオイル消費がターボからだけでなくエンジン本体から起きていたらどうするのか?ということが気になりました。
ユーザーもそこは気になったらしく質問するとブローバイホース内部にオイルの付着があまりないので腰下(エンジンブロック)のピストンからの吹き抜け(ブローバイガス)は無いのでオイル消費はエンジン本体からは起きていないとの返答だったそうです。
単なるヘッドガスケットとターボチャージャーの交換だけにしては少し高額な気がしますが、ディーラーなので価格の面ではある程度高いのはやむを得ない感じですがそれよりも内容がいまいちな気がしました。
ヘッドをオーバーホールすればオイル下がり(少なからず起きていると思います)に関しては解消しますし、ブローバイガスが少ないとしても9万㎞走行してのであればブロック側(ピストン側)も何もないとは言い切れません、少なからず新車時に比べ増加しているのは間違いないかと思います。
そもそもエンジンを分解するくらいの整備なのにオーバーホールまたは分解清掃しないということが納得いきません。
そこそこ高額の修理ですので、このメニューで行って”もし症状が改善されなかったらどうする?"ということが頭によぎってしまいます。
そこで私は以下のメニューを提案しました。
・リビルトエンジンへの交換
・リビルトターボチャージャーへの交換
これを基本としたもので当店ではお見積もりさせていただきました。
ディーラーで出した見積もりよりも高い金額になりましたがこのほうが確実にお客様が訴えている不具合症状は解消できるからです。
何でもかんでもリビルト品に交換することを提案するわけではないのですが、今回の車両が軽自動車で比較的メジャーなエンジンのためリビルト品として価格がかなり抑えられることがメリットだからです。
当店でも先ほどの症状をすべて解消するためにエンジンをオーバーホールしたいのですが時間も金額も大きくなりすぎるのでお勧めできませんでした。
リビルト品は新品と同等の扱いをしてもよいものですのでこの提案をさせていただき、ユーザーも納得して作業に取り掛かりました。
気になっていたオイル漏れ箇所
ヘッドとの継ぎ目、フロントカバーの接合部はやはり漏れています。
リビルトエンジン
これ以外にもターボチャージャー自体もリビルト品で交換しました。
オイル消費に関しては走行を続けて結果が出てきますが、当然漏れはありませんしエンジンの力もよみがえり満足していただきました。
今回の件で整備に対するメニューの組み立て方が複数ありユーザーによってどのようなものを選択するのかというのも複数あることがお分かりいただけると思います。
整備士の観点でいえばオーバーホールして直すということが本筋かもしれませんが、修理金額が高くなってしまったり価格を抑えようとすると一度で満足のいく品質を確保できなく中途半端な整備になってしまう可能性があります、そのようなことになればユーザーに負担をかけ単なる整備士の独りよがりになってしまいます。
ユーザーによって車両に対する考え方など価値観は十人十色です、そこをよく聞きだして提案することが重要でこの作業に取り掛かるまでもかなりの時間を掛けてお話しさせていただきました。
話を進めていく中でこちらのユーザーが単に高い安いで相談しに来たわけではなく、どれだけ良い状態に戻したいかを求めているかが話し合っていくうえでわかったので、ディーラーでのお見積もりよりも高額な金額になってしまいますが、確実に要望に応えられかつオーバーホールするよりも価格・時間が抑えることが出来る内容を提案するに至ったのです。
とはいえこの方法が正しいというわけではなくあくまでも一人ひとり要望をよく聞きだしたうえで提案をしなければいけないということです。
人の話(気持ち)を聞き出しそれぞれ要望に合わせた提案するということは整備士の修理技能同様に非常に大切なスキルとも言えますし、ユーザーもご自身の意向などしっかりお話しすることが重要なことだとご理解ください。