トヨタ カローラバン(KE74)の整備ご案内
この車両を整備するにあたってのいきさつについては以前のブログでご案内の通り
エンジンの不調に関してはインテーク・エキゾーストマニホールドのボルト脱落や緩みによる二次空気の吸い込みによる空燃比エラーであることはご案内の通りでしたが、いざ組み直してエンジンを掛けると掛かりが悪く空燃比も良くないようでラフアイドルを起こしています。
キャブレータなどが悪いのかといろいろ調べるが特に悪そうな様子はありません。
あれこれ点検する中でヘッドカバーに繋がるホースを外して塞ぐとエンジン回転が安定します。
ここにはワンウェイバルブが付いていますが点検するとワンウェイせずどちらも筒抜けの状態になっていました。
このバルブに繋がるホースはキャブレーターの直下(インテークマニホールド)に繋がりエンジン内部の圧力とインテークマニホールド内部の圧力差で通気をコントロールします。
通気しっぱなしになっていることで、またもや空燃比がおかしなことになっていたのでした。
劣化したホースとバルブを交換します。
この部品を交換するとエンジンはすんなり一発で掛かりアイドリングも安定しました。
エンジン不調の原因はインマニの二次空気の吸い込みと、PCVバルブの故障という2重の故障原因を抱えていた訳です。
どちらも同時に起きたり最近おかしくなったものとは考えづらいものです。
他にも交換が必要なところは盛りだくさんでした。
スパークプラグ
このタイプのスパークプラグ交換サイクルは2万km毎ですがどう見ても、交換時期を越えている摩耗具合
燃料フィルター
明らかにずっと交換していないことがわかるフィルター
汚れが詰まりエンジン不調の原因にもなります。
ラジエーターキャップはパッキンが劣化で膨潤して亀裂も酷い状態
キャップを交換してしっかり圧が掛かるようになると今度はラジエータから冷却水漏れが・・・
白色でチェックすると、やはり冷却水が。
ずいぶん前から漏れていたのでは?
オーバーホールします、やはりアッパータンクもコアもピンホールだらけで交換になりました。
抜いた冷却水もかなり汚れがひどく交換していなかった様子、当然防錆能力も落ちていますので不具合を引き起こす原因のひとつです。
エアクリーナーはいつの時点が交換時期だったのでしょうか?
エンジンオイルを交換しようとドレンボルトを緩めると・・・渋い!
ボルトのネジ山が潰れています・・・昨今ディーラーでもオイル交換は上抜きが多いとか。
しかし、ドレンボルトを壊したままで良いわけありません。
ファンベルトも劣化が酷くヒビだらけ・・・
最後にお客様からのご依頼で後部ゲートを開けても保持できなくなっていたバックゲートダンパーの交換。
もちろん製造廃止品ですが、他車の部品を流用して見栄えもほぼ変わらず対処することができました。
ここまで寿命や不具合を抱えて交換が必要な部分が多いと、ユーザー様が非常に気の毒に思えました。
毎年車検整備を受けていたのも関わらず、”部品が無くて治せない”とか”ベストな状態にすることが出来ない”とかそんなこともお客様は伝えられずこのよう状態にまでなっていたのは、整備する側にお客様の意図(気持ち)が伝わっていなかったのではないかと思います。
ディーラーは比較的新しいお車を整備することが多いので、年数の経った車両を邪険に扱うこともあると思います。※すべてとは言いませんが・・・
”古い車なんだからこんなもんでいいでしょ”と言うような扱いをされていたのではないかとさえ思えてきてしまいます。
今回当店にご依頼された整備内容ですと決して安く済むようなものではありませんが全て快諾を得て進めていますので、このお客様がディーラーに値段を抑えるような指示をしていたとは到底思えません。
たとえ予算が限られていたとしても毎年車検が到来する貨物車ですので、メンテナンスのスケジュールを立てて毎年分けて手入れをすればよいだけだったのです。
このようなスケジュールやメニューを立てることも整備士(フロントマン)の技量となりますが、残念ながらそのような見立てのできる者がいなかったのでしょう。
昭和61年式、車齢31年 走行距離20万kmを超え今なお現役のこちらのお車私の見立てでは、特に車両寿命は見えてきませんのでまだまだ活躍することができることでしょう。
番外編
今では新車採用されることも無くなったOHVエンジン。
このようなカラクリ仕立てのような機械動作はなぜかほっとします。