ゴルフⅤ R32のご入庫
ご用命はエアコンが効かないとの事。
入庫時ほとんど冷風は出ない状態でしたのでまずはガスが規定の量入っているか確認してみると・・・
やはり270gしか入っていません、これでは正常な状態ではないので規定のガス量525gに入れ直してみます。
※冷媒システムの点検では、冷えだけでなく圧力の判定をするのにガスの量が正規の量入っていることが基本となります。
しかし規定量がしっかり入っている状態でもエアコンの効きはよくありません。
ガスの圧力を見ても高圧も低圧もほぼ変わりません。
本来でしたら高圧側が上がり低圧側は下がるのが正常です。
コンプレッサーにかかる信号にも問題はありませんのでコンプレッサーの内部不良でうまく圧縮が出来ないことが原因と判断しました。
お客様にはコンプレッサーの交換が必要なことと、圧縮が抜けるような状態ですとコンプレッサー内部で焼き付く寸前になっていることが多く(特にこのころの車両に起きやすい)鉄粉などが多く排出している恐れがあることをご説明いたしました。
鉄粉の排出(焼き付き)がどれだけ恐ろしいことかは過去にご紹介したブログにも紹介させて頂きました。故障事例リンク
お客様には完全に回復を望む(コンプレッサーのみの交換では再発の恐れがあること)には上記ブログに紹介した方法が必要であることをご説明して作業着手にご同意いただきました。
しかし、私はこの方法がベストなのはわかっていましたが、金額的な負担があまりにも大きいため何とかエアコン回路の洗浄が出来ないであろうかと調べていたところ納得のいく方法でかつ作業負担を減らせるそのような機器を見つけることが出来ました。
エアコン回路自体に洗浄剤を流し込み洗浄する方法ですので配管の洗浄はもとより、室内にあるエバポレーターも取り外すことなく洗浄できるというのが最大のメリットです。
エアコンの回路はこのようになっています。
今回は、エンジンルーム側のコンプレッサー、コンデンサー(レシーバータンク一体)、エキスパンションバルブは交換しますが室内側のエバポレーターと配管は洗浄することにしました。
エバポレーターをまず単体で洗浄液を流すと排出したものからはこれだけの汚れが出てきました。
灰色になったものはオイルの色です、本来は薄いキツネ色なのでこのように黒ずんでいること自体危険な状態です。
エンジンルーム内の部品は交換しますので配管も洗浄したあとコンプレッサー以外の部品を組みサイクル全体に洗浄液を流して洗浄を行います。
最後に新品のコンプレッサーを組み真空引きのあと冷媒ガスを注入します。その際は保護性能を上げるためWAKO'Sパワーエアコンプラスも添加します。
※左は同等の性能を持ったNUTEC NC-200
今回の作業方法でのメリットは、室内側の分解をしないで済んだことで金額的な負担を減らせたことと、作業による二次的な被害を防ぐことが出来ました。
※年数が経った車両は脱着だけでも壊れてしまう部品が増えます。
エアコンの冷媒回路の故障は想像以上にダメージが広範囲で大きく高額な修理になります。
その中で少しでも負担を少なくしてかつ再発を防ぐしっかりした方法はこのような機器と複雑な手順を必要とします。
構造上全ての不具合を回避することは難しいのですが、このような状態に至らないようにするためにもエアコンガス量の点検と添加剤による予防を行うことが出来うる手立てかと思います。