FIAT500 (チンクチェント)のご入庫
ご用命は、エンジンチェックランプ点灯とエンジンがブルブルして力が無いとの事
こちらは、FIAT500でも1400ccツインカムエンジンを搭載したモデルです。
入庫時、明らかに1気筒死んでいるようなエンジン回転でしたので、故障コードを読み出してみるとやはり3番シリンダーのミスファイヤーを検出しました。
3番シリンダーが失火しているということです、ありがちな故障としてイグニッションコイルの不良が考えられましたのでコイルを他のシリンダーのものと入れ替えてみましたが、3番シリンダーの失火は変わりません、スパークプラグも同じように入れ替えても変わりません。
ミスファイヤーの検出はエンジン回転のトルクのムラを読み取って判定します。
どのシリンダーにトルクのムラがある(うまく爆発していない)かで失火と判断するため、爆発が上手くいっていない=失火(ミスファイヤー)となるのです。
点火系統ではなさそうなので嫌な予感がします・・・
エンジンが正常に回るためには、良い火花・良い混合気・良い圧縮の3要素が必要です。
良い火花 : コイル・スパークプラグ入れ替えても変化なし、しっかり火花も出ている。
良い混合気: 他のシリンダーが正常に回っているし、燃料を噴射するインジェクターも作動音がしますし、燃焼室がガソリンで濡れているので噴射はしてそう。
上記2点はおおよそ正常そうです、残るは圧縮です。
圧縮は、コンプレッションゲージと呼ばれるもので圧縮圧力を測定していくのですが、何と3番シリンダーの圧縮が全然ありません!!
3要素のうち圧縮が無いことが原因のようですが、圧縮が無くなるような状態はエンジン内部に問題があるためおおごとです。
お客様と相談して時間と費用からエンジンを中古品と交換することになりました。
エンジンを交換して不具合は解消しましたが何が原因だったのか検証しなければなりません。
降ろしたエンジンの内部がこちら、シリンダーヘッドの燃焼室です。
3番シリンダーのインテークバルブの傘が割れています、これでは圧縮が抜けてエンジンは正常に回ることが出来ません。
インテークバルブを外してみるとご覧のとおり
では何が原因でこのようになったのか?ということです。
バルブが破損するということで考えられるのはピストンとの干渉です。
ピストントップのバルブリセス(バルブが当たらないようにする逃げ)になんとなく触れた感じはありますがこれが原因だというほどの強い当たりが無く何とも言えません。
バルブとピストンがぶつからないようにタイミングをとるのはその名の通りタイミングベルトですが分解前にタイミングを点検しましたがバルブタイミングにも狂いはありませんでした。
他に考えられることはエンジンが過剰に高回転になるとバルブスプリングがバルブを抑え切れずサージングを起こしバルブが暴れてピストンと干渉するということもあるのですが、いくら高速道路を走行中とはいえデュアロジック搭載車両でオーバーレブするとも考えられません。
他に考えられることでは異物が混入してバルブに噛みこむ? 一体何が入る?
もしかしたら単純に部品の破損?
など、故障原因についてはハテナとしか言いようがありません。
考えれば考えるほどわからない事象でしたが、こんなことが起きたということです。