メルセデスベンツ 560SEL(W126)のご入庫
大変懐かしいモデルですね、平成元年式です。
しばらく動かさなかったところエンジンが掛からなくなってしまったそうです。
基本点検から進めます。
エンジンが回るための3要素
・良い圧縮
・良い火花
・良い混合気
この3要素が伴わないとエンジンは回りません。
良い圧縮 :圧縮に関しては今まで動かすことが出来たのとクランキングの音でまず圧縮に不良は起きていなそうなので良しとします。
良い火花 :プラグコードの先でスパークしていますのでこちらも問題なしとします。
良い混合気: 混合気とは空気と燃料が適切な混ざり具合をしているか?ということですので燃料がエンジンまで来ているかを点検しなければなりません。
すると、ポンプからの燃料圧力(燃圧)が掛かっていません。
このエンジンは、BOSCHのDEジェトロと呼ばれる機械式インジェクションを採用しているのですがフューエルディストリビューターに燃料が来ていないのが確認できました。
3要素の良い混合気がダメなためエンジンが掛からないのが確定しました。
エンジンルームまでガソリンを圧送するのは燃料ポンプです。
この車両は床下に付いているタイプです。(現代の車はタンク内部にあることが多いです。インタンク式)
外付タイプですのでポンプに電源が掛かっているか点検するとしっかり掛かっていますし、直接単体点検を行ってもポンプが回りませんのでポンプの故障と断定しました。
このお車、5600ccもあるため燃料ポンプも2個使用しています。
ポンプの交換とともに、燃料フィルター・アキュムレーターも同時に交換します。
燃料ホースも漏れていますので交換です。
燃料ポンプは、直列に繋がっていますが燃料タンク側のポンプ入口が赤く錆びています。
恐らく燃料タンクが鉄製ですので内部に錆が発生していてその錆がポンプを固着させたようです。
案の定、ポンプを交換してしばらくするとエンジンが止まってしまいました、長期に放置したお車では起こりがちな故障です。
燃料タンクの錆がタンク内のフィルターに引っ掛かり燃料がポンプこないことが原因です。
タンクの出口に取り付けられているフィルターですが赤錆の粉で目詰まりを起こしてしまっています。
燃料タンクを車両から取り外して内部洗浄を行い不具合は解消されました。
ご用命は、エンジンが掛かるようにしてもらいたいとの事でしたので今回の修理はここまでです、しかし燃料タンクの錆が再度悪さをする可能性があるためタンクのメンテナンスをもっとしっかり行わないと完治したとは言えないことをご説明しました。
長期間放置してしまったお車は、それだけでも様々な部分に不具合を起こしますので一筋縄でいかないものです。