トヨタ シエンタ(NCP81)のご入庫
ご用命は、”時々ブレーキを踏んで止まる直前何か音がする、振動もする”とのこと
オーナーは女性の方で車に詳しくありませんのでよく問診して不具合発生状況を聞きだします。
・60km/hからの減速時によく出る気がする
・止まる直前?出る気がする
・前の方から音がする感じがする
・カタカタする感じ?表現しずらい感じ
・ブレーキペダルも重くなる感じがする
・10kmほど走行した後によく出る感じがする
・出始めると連続して出る感じがする
テスト走行をしますが不具合は発生しません。
そこでブレーキを点検しましたが特に目視による点検で不具合らしいものは見当たりませんでした。
次に 診断機を使い故障コードを読み出してみます。
すると、
・C1249 ブレーキスイッチ断線
・C1271 右フロント車輪速センサー出力異常(スピードセンサー)
を検出しました。
故障コードを一度消してテスト走行をしてみるとブレーキスイッチ断線のみを再検出しました。
ブレーキスイッチは、ブレーキランプを点灯させるためのスイッチなのですがそれ以外にも運転者がブレーキを掛けている状態であることも検出してコンピューターに信号を送る役目をしています。
不具合現象が再現できていない状態ですので推測でありますがブレーキスイッチの検出不良でABSが誤作動を起こした可能性があります。
ABSは、ポンピングブレーキを高速で行いますので作動音もしますしブレーキペダルに振動も伝わりますのでお客様が感じている症状と同じ可能性はあります。
お客様にお話ししてブレーキスイッチをお取替えしてお帰りになりました。
しかし後日、お客様からまだ現象が出るとの事でご連絡いただき再入庫しました。
もう一度、診断機を当てると
・C1271 右フロント車輪速センサー出力異常
(このセンサーは車輪(タイヤ)の回転数を読むセンサーです。)
のみを検出しました。
再度、故障コードを消去してテスト走行をすると故障コードは検出しません。
???
そこで、診断機でチェックモード機能を使用して走行します。トヨタ車は通常ダイアグノーシス(自己診断)は2トリップごとに検出しているのですがチェックモードを利用すると1トリップごとの検出に切り替えることが出来、検出感度を高くする機能が搭載されています。
チェックモードで走行すると先ほどの故障コードを検出しました!
検出感度を高めると検出するので、わずかに右フロントの車輪速センサーに何らかの異常をきたしているようです。
そこで、前輪左右の車輪速センサーの数値をグラフにしてみると、発進と停車の時に右だけ感度が悪く信号が出ていないのがわかりました。
(直進での走行状態なので左右ほぼ同じようなグラフが出ることが正常です。)
速度が上がるとセンサーの数値が安定するので完全に壊れているような状態ではないようです。
センサーを点検しようとしましたが、錆がかなり多くてセンサーが外すことが出来ない状態でした。
センサー取り付け部も錆で膨らんでしまっています。
センサーは磁界の変化を読み取るためこのエアギャップ(隙間)の大きさは非常に精密でわずかにギャップが広がっただけでも感度が落ちて検出できなくなります。
原因は取付面が錆で膨らんでしまったことで、センサーが離れてエアギャップが広がってしまったことです。
この取付面の錆をよく落として新しいセンサーを取り付けました。
交換後、左右の車輪速センサーの出力が揃い不具合は解消しました。
センサーの出力が出ていない=車輪が回っていない
センサーの出力がある =車輪が回っている
センサーの出力の左右差があることで、片輪が滑ってスリップしていると車両は認識してABSを誤作動させてしまったという故障でした。