BMW135のご入庫
”走行距離が15万kmに達するのでATFを交換してもらいたい”とのご依頼を受けました。
お客様、今までディーラーに整備を依頼していたため積極的なATFの交換を進められないままこの距離まで来てしまったそうです。
走行距離が伸びて一度も交換していないATF交換は、リスクが非常に高く交換後にミッショントラブルを起こす可能性が高いためどこのお店でもやりたがりません。
しかしお客様はこの先この愛車を30万kmまで乗りたいのでこのまま無交換で乗り続けるのも無理だろうとご相談にいらっしゃいました。
当店では、交換したときに起こるかもしれないリスクをお話しして納得していただいた上でかつ、最大限安全な交換方法を行うことをご説明して作業着手になりました。
古いフルードを抜き取りフラッシング作業を行います。
何度もフラッシングを新品レベルの透明度になるまで繰り返します。
バルブボディと呼ばれる制御部品です。
この中は精密な迷路(油路)になっていてソレノイドと呼ばれる切り替えバルブが電子制御で油路切り替えを行います。
オイルパンを外した時にしか交換できないコネクタースリーブも同時に交換します。ここもよく漏れを起こす部品です。
オイルクーラにつながるパイプのオーリングも交換します。
オイルパンを新しいものに交換します。この年代のBMWのオートマチックはオイルパンが樹脂で出来ているのとフィルターが一体になっているのでこのような作業の際は交換になってしまいます。
使用するフルードは、WAKO'S ハイパーSを注入します。
当店では通常WAKO'S セーフティSを使用するのですが、ハイパーSはセーフティSに比べ高出力車や重量車のように大きなトルクを伝達するのに優れたフルードです。
今回のお車は、3000ccターボ車の高出力エンジンを搭載していますので こちらのフルードがお勧めで使用します。
また、走行距離が伸びて交換のリスクも高いので同時に、WAKO'S ATプラスも添加しました。
伝達率の向上やAT内部の汚れを凝集させない事を目的にした添加剤ですので効果を期待します。
診断機でフルード温度をモニターしながら正確に油量を調整します。
調整後はフルードの劣化度をリセットします。
ATやCVTに使われているフルードは使用に伴い少しずつ粘度低下を起こします。
(フルードはもともと粘度が低いので劣化による粘度低下は致命的なダメージを引き起こしてしまうことがあります。粘度低下の少ない高性能フルード(せん断安定性の高いフルード)に交換することはミッションを長持ちさせる有効な手段です。)
粘度低下を起こすとシフト時のタイミングやショックが変化してきます。そこで自動車メーカーは計算してシフトのタイミングなどをフルードの劣化に合わせて学習制御をしています。
今回のように新しいフルードに入れ替えた際は、フルードの粘度は回復していますので、学習値(劣化度)をリセットしてあげる必要があるのです。
交換後は走行テストを行いミッションが正常に作動しているか確認して作業は終了です。
AT・CVTフルードの交換はこのように大変手間をかけて作業を行わなければならないのはもとより、正確な温度管理の下で油量を調整しなければなりませんのでお待ちいただいている間での作業はお引き受けしておりません。
最低でも一泊は必要ですのでご了承ください。
交換後は、お客様はミッションに問題はないし、シフトフィーリングもとてもよくなって安心したと喜んでいただくことが出来ました。