日産マーチ(K12)車検整備でのご入庫
走行距離5万km代 あまり距離は伸びていないこちらのお車、しかし年数は経っているのでよく診なければなりません。
リヤブレーキを分解してみますとなにやら湿っぽい感じがします。
ホイールシリンダーのブーツをめくるとやはり!ブレーキオイルが漏れ出しています。
ピストンを取り出すと真っ赤に錆びてしまっているのがお分かりになると思います。
シリンダー内面の錆を研磨して取り除いたのですがご覧のとおり錆の侵食が激しくボコボコになっていました。内面をピストンとカップが摺動するので凸凹していれば気密を保つことが出来ません。
もちろんこの状態で新しいカップキットを組みつけても気密が保てず漏れてブレーキが効かなくなってしまいますので新品にアッセンブリー交換しました。
この時代の日産コンパクトカーは同じようなブレーキシリンダーを採用していてとても錆びやすくこのような不具合を密かに抱えていることが非常に多いです。
今回、車検整備で気が付き対処できたことは幸いで、実際この状態でも運転している人は気が付きませんし車検の検査自体も合格してしまいます。
そんなことあるの?と思われるかもしれませんが、車検場(運輸支局)での検査コースではブレーキドラムは外しませんので、よほど漏れが酷く外側に垂れてきていない限り検査官は不良判定をしません。また、制動力測定を行うのですがこのぐらいの漏れでは数値に表れないのです。
よく、検査と車検整備を同じ”車検”という言葉にひとくくりにされていることが多いのですがあくまでも車検整備(乗用車なら法定24ヶ月点検)と車検証を更新する為の継続検査は別々のものなのです。
継続検査:現時点で保安基準に適合しているのか検査を行う。合格すれば新しい車検証が発行されます。
定期点検(車検整備):点検で保安基準に適合していない部分に関しては改善し、今後も安全に走行できるように予防整備を含めて整備を行う。(予防整備の幅は、整備士・整備工場・お客様のニーズによってその判断は大きく左右されてしまいます。)
ですので、格安で車検をやりますなんていうところでは、車検整備自体に重きを置いていないことが多く、車検を通したばかりなのに壊れたなんてことを良く聞くのです。
また、お客様が”安く安く!”とか”車検が通る最低限で”と言うのも整備する側は予防整備の幅を狭めざるを得ないので危険です。
先ほどのブレーキのような危険な状態でも車検の検査を通そうと思えば通すことも可能なんですから。
しかし、普段目に見えないような重要保安部品こそ、しっかりと整備をしなければいけないと思います。
このような警鐘は今まで何度となく書いているのですが、それでも世の中の流れは格安・スピード車検の方向にディーラーでさえも向かってしまっていることは悲しく危険なことです。
自動車の性能は日々進化しているしているのですが、基本構造はあまり変わっていません。スピードも出て安定性もよくなりましたがあくまでもそれは自動車が正常な状態だからこそ保たれていることなのです。
性能が進化しても自動車が機械である以上、定期的な点検・メンテナンスを行い安全を確保しなければならないということは昔も今も変わりがないということです。