スズキKei WORKS(HN22S) ターボチャージャー不良でご入庫
お客様からメンテナンス状況を確認したところ、車検からエンジンオイル交換をしていないとのこと。
入庫時はエンジンオイルもゲージにつかない程減っており、明らかにターボの過給もされていない状態でした。
こちらがターボチャージャーです。
中心の羽のようなものはターボチャージャーのタービン部分です。
すでに軸が折れて転がり落ちています。
ターボチャージャーは、排気ガスの圧力を受けたタービンがシャフトを回して同軸上のコンプレッサーを回してエンジンに多くの空気を送り込むことで実質排気量が上がりパワーが出るような仕組みになっています。
このターボチャージャーの軸は何十万回転という高回転で回るため大変精密な構造で負荷もかかります、その精密な軸を潤滑して守っているのがエンジンオイルなのです。
エンジンオイルのメンテナンスを怠るとターボチャージャーの軸は焼き付きこのように壊れてしまいます。
Kei WORKSメーカーからのエンジンオイル交換サイクルの指定は、5000km(シビアコンディション2500km)毎になっています。
実はこのような壊れ方をした場合、ターボチャージャー交換よりも再発防止の洗浄などのほうが重要で大変な作業になってきます。
なぜならオイルメンテナンスを怠った状態で新品のターボチャージャーを取り付けても、油路内はどろどろのオイルで詰まっていたりオイルの流れが悪くすぐに焼き付いて壊してしまうからです。
作業の手順としては
①オイル経路の清掃(焼き付き原因になる部品の交換)
②ターボチャージャー交換
③潤滑保護・洗浄剤の添加(再発防止)
となります。
今回は、焼き付いた状態なので,即効性フラッシング材で内部を綺麗にしてからターボチャージャーを交換します。
もちろんターボにつながるパイプも新品に交換します。
今回はあまりにも汚れが酷かったため新しいオイルで2回交換しました。
交換後に、WAKO'S FV(フォアビークル)を添加します。
こちらは、潤滑性能をアップする目的はもとより、分散材が入っていますのでまだ残っている内部の汚れをゆっくり溶かして分散することも目的としています。
お客様には、次回エンジンオイル交換を3000km走行後を厳守するようにお話ししました。(まだ汚れが残っていることを考慮して早めの交換です。)
この不具合で見逃しがちな重要な部分はこの部品です。
PCVバルブ(ポジティブ クランクケース ベンチレーション バルブ)と呼ばれるクランクケース内の圧力を適切に保つ部品です。
これが内部で固着するとクランクケース内の圧力が高くなり
ターボチャージャーからオイルが戻れなくなる=ターボチャージャーへオイルが流れない→ターボ焼き付き
清掃も大切ですがこの部品も見逃せません。
最近はダウンサイジングエンジンが主流になっていますが、このエンジンは排気量を落としてターボを付けることで効率を上げることを目的としています。
今後ターボチャージャーが付いているお車が増えてくると思います、最新のエンジンでもターボチャージャーの仕組みは変わっていません。オイルメンテナンスの重要性は自然吸気エンジンよりもシビアです。
当社ではメーカー指定のオイル交換サイクルは保証期間内を壊さず乗れる最低ラインだと思っています。
お車を”大切に永く乗りたい” ”初期の性能を維持したい”のでしたら交換は5000km走行毎がベストですし、ターボチャージャーなどの負荷が大きいお車はワンランク上のオイルをおすすめします。