VW シャラン
ガクガクするエンジン不調が始まったが何とか自宅にたどり着いた、しかし翌日はエンジンは完全に掛からなくなったということで積載搬送されました。
入庫時クランキングは出来ますが初爆がなくエンジンは掛かりません。
診断機を繋いで故障コードを読み出します。
バルブタイミングと空燃比に関する故障コードを検出していました。
バルブタイミングに関するエラーを検出していますので嫌な予感がしますが、基本的な点検は必要なのでガソリンエンジンの3要素”良い火花・良い燃料・良い圧縮”を点検していきます。
燃料ポンプも正常に作動していますし火花も出ているため火花と燃料はとりあえずOKです、残るは圧縮ですがクランキングの圧縮音も異常なほどではないようです。
圧縮音に関しては感覚的なのですが圧縮にかかわる故障コードで検出していたバルブタイミングが怪しくなってきました。
そこでこのエンジンで簡単にチェックできる部分を確認してタイミングチェーン伸びによるバルブタイミングずれが確認できたためチェーン交換を行います。
タイミングチェーンカバーを外すとこのようにタイミングチェーンが現れます。
この写真の中でチェーンがかなり伸びていることが判断できるところがあります。
これはチェーンテンショナーでピストンでチェーンのたるみ部分を押してチェーンのバタツキを抑えているのですがこれはかなり伸びきった姿です。
チェーンテンショナー単体で見てみるといかにピストンが出すぎているのがわかります。
チェーンのたるみが他のところにたるみが集まるとさらに大変な事が起きます。
動画で見るとチェーンのたるみとチェーンテンショナーの動きがいかに激しいかわかると思います。
チェーンとガイド等一式交換します。
チェーンの新旧の長さを比べると1コマほど長くなってしまっています。
新しいチェーンで組み上げるとチェーンテンショナーの突き出し量がいかに少ないかわかります。
バルブタイミングはSSTでしっかりセットします。
分解前にチェーン伸びの確認が出来たのは、このサービスホールを開けることでSSTが掛からないくらいのずれが確認できたからなのです。
交換後は正常にエンジンは掛かりエラーコードの検出もなくなりました。
バルブタイミングとはエンジンピストンの位置に対してのインテークバルブとエキゾーストバルブの開閉タイミングのことで、わずかなずれでもエンジン性能に影響を与えますし一定以上ズレればエンジン不調・始動困難に至るばかりではなく最悪バルブとピストンの接触によるエンジン破損に至る重要なものになります。
タイミングチェーン伸びの不具合の要因としてはエンジンオイルの質が大きく影響をあたえます。
タイミングチェーンはエンジンオイルで潤滑しているためオイルの質が悪いと摩耗が進み伸びた状態になってしまいます。
ではエンジンオイルの質とはどんなことでしょう?
エンジンオイルの選択に関しては様々な規格があるのでこのエンジンの指定の規格をクリアした信頼のおける油脂メーカーのオイルを使用していればよいのですが問題は交換サイクルにあるように思われます。
ドイツ系の自動車メーカーではロングライフオイルを使用して従来よりも長いサイクルでのオイル交換を推奨しています。
このオイルはロングライフでの交換サイクルの使用に耐えうるオイルとのことですが、日本での使用環境では不向きであると言わざるをえません。
エンジンオイルの潤滑性能などの保持には酸化防止や汚れなどの不純物をオイルに取り込む分散性能など様々なものがあるのですがロングライフオイルはその性能を引き上げているもののキャパシティを超えてしまうことで著しく性能低下を引き起こします。
エンジン自体も新車時から少しづつ性能低下を起こしブローバイガスの増加、直噴燃料ポンプからのわずかな燃料混入、汚れの堆積などが増えていきますのでオイルにかかる負担はどんどん大きくなって行きいつのころからか、ロングライフサイクル中でオイル性能のキャパを超えてしまいそのまま使用を続けたことで今回のような不具合に至るものと考えられます。
当店でもロングライフ規格のオイルは在庫していますがロングライフでの使用は推奨しておらず、半年もしくは5000㎞ごとのどちらかが早期到達した時点を推奨しています。
これはオイルが持つ性能を超えないように余裕も持って交換すること大切なためだからです。
オイルの潤滑に頼らないタイミングベルトでもオイルの状態が悪いと被動側のカムシャフトのフリクションが上がることでタイミングベルト切れなどが起こりやすくなりますのでオイル交換の重要さは昔も今も変わらないということになります。