ニッサン アトラス(AKR71)のご入庫
仕事現場でエンジンが掛からなくなってしまったので来てほしいとの事
症状はクランキングは勢いよくするけど掛かるそぶりもないとの事でしたので、バッテリー上がりなどではなさそうです。
現地にレスキューに向かいましたが、おっしゃっている通り掛かるそぶりもありません。
一通り点検しても原因はわかりませんのでレッカー搬送にて運ぶことになりました。
工場に搬送され本格的にトラブルシューティングを始めます。
こちらの車両、電子制御のジーゼルエンジンですので当然故障コードの読み出せるシステムなのですが、診断機をつないでもコンピューターにアクセスできません。
!!!
メーター内のチェックランプがイグニッションONの状態で点灯していません。
※写真は正常作動時のもの
エンジンチェックランプが点灯しませんし、コンピューターにアクセスできない状態を考えると、コンピューターシステムが作動していない可能性が高いです。
エンジンが掛からない症状からメーターの警告灯電球の切れている可能性は低いと考えられますので、エンジンコンピューターの警告灯のアース側を測定するとやはり電圧が掛かっています。
電圧が掛かっているということはここから上流は正常ですし、コンピューター内部の警告灯のアース回路が作動していないのも間違いありません。
次にコンピューターが作動していないようなので、電源が掛かっているか点検を進めます。
先のチェックで青枠は正常ですので、赤枠のメインリレーが正常に作動しているか見てみます。
メインリレーの赤矢印に電源が掛かってアースしているのに接点がオンしていません。
コンピューターに電源が行っていないということです。
このリレーを交換してようやくチェックランプが正常に点灯しました、エンジンも掛かるはず! キュルルル キュルルル あれ?エンジンは掛かりません、まだ何か不具合が隠れているようです。
初爆もないのでインジェクターが噴射しているか燃圧が掛かっているか点検すると、燃料が出てきません。
インジェクションポンプから燃料が送り出されていませんので、噴射をつかさどる系統を点検してみようと構成図とにらめっこしているとSPバルブリレーという部品が目に入りました。
これはスピルコントロールバルブと呼ばれる燃料噴射の基本となるものを制御ものですがここに電源を供給するのがSPバルブリレーです。
このリレーも先ほどのメインリレーと同様のもので動作回数も同じなので傷んでいても不思議はありません。
リレーを点検するとやはりメインリレーと同じ状態に陥っていました。
SPバルブリレーも交換してようやくエンジンは正常に掛かるようになりました。
2つのリレーが壊れたことでエンジンが掛からなくなったということでした。
このように目に見えない電気のトラブルは配線図などで電気を測定しながら行っていきます。
とても地味で根気のいる作業となります。
ガソリンでもジーゼルエンジンでも電子制御の車両はコンピューターの様々な制御の上で動いています。
このような小さな部品ひとつ正常に作動しないだけでエンジンは掛からなくなります。同様の故障事例リンク