ニッサン AD(Y12)のご入庫
ご用命は、エアコンが全く効かないとの事。
入庫時、吹き出し口から風は強く吹いていますがまったく冷たくありません。
冷房が効かないには様々な要素があるのですが、まずはエンジンルーム内の冷媒配管で低圧側を触ってみます。
正常な状態ではこの配管は冷たく、結露するくらい冷たいのが正常です。
※似た配管で高圧配管というものもあるのですがこちらは逆に非常に高温になりますので触る際はご注意ください。
しかし、こちらの車両は全く冷たくありませんので冷媒システムが作動していないのがわかりました。
次に、冷媒ガスが入っているか簡単にチャックで確認してみるとガスが噴き出しますのでとりあえずコンプレッサーは回す条件を満たしているようです。
※冷媒ガスがあまりにも少ないと保護機能でコンプレッサーをONさせないようになっています。
コンプレッサーを見るとマグネットクラッチが入っていなく回っていないことを確認できました。
正常な状態ではマグネットクラッチがONすると中心部分が回りだします。OFFでは中心が回りません。
正常なマグネットクラッチをON/OFFさせている動画です。
不具合車両ではマグネットクラッチがONせずコンプレッサーが作動していないことがわかりました。
マグネットクラッチの入り切りは下記の回路図の様になっています。
ヒューズやリレーなどを介してマグネットクラッチに電気流してON/OFFする仕組みですのでマグネットクラッチのコネクターの電源を測るとエアコンスイッチに合わせて電気がON/OFFしますので電気回路は正常です。
どうやら、マグネットクラッチ自体が壊れてしまっているようです。
コンプレッサーを取り外してみます。
二つに分かれていて冷媒を圧縮するコンプレッサー本体と、コンプレッサーをON/OFFさせるためのマグネットクラッチプーリーに分かれます。
マグネットクラッチとは名前の通りマグネット(電磁石)で電気を流すことで磁化してベルトが掛かっているプーリー部分とコンプレッサーとをくっつけて動力を伝えて回します。
マグネットクラッチの抵抗を測定してみると∞Ωで断線していました。
正常な状態ではこのように通電させると電磁石の磁力で張り付きます。
マグネットクラッチとコンプレッサーは別々の部品ですが、こちらのお車走行距離20万kmを超えていることからコンプレッサーも寿命を迎えることも考えられるためマグネットクラッチとコンプレッサーがセットになったリビルト品で交換することにしました。
交換後は冷媒ガスを規定量入れて正常にエアコンが効くようになりました。
エアコンのトラブルは冷媒システムの故障以外にも多岐にわたりますが、コンプレッサーがしっかり圧縮することが基本となります。