冬の寒い時期になると症状が顕著に表れる不具合で”オーバークール”と呼ばれるものがあります。
言葉の通り ”冷え過ぎ” という不具合です。
エンジンはガソリンや軽油を燃やしてエネルギーを取り出すのでかなりの発熱量です。
しかし、その熱が高すぎればエンジン自体が歪んで壊れてしまうためエンジン内部に冷却水を循環させることで適温に保つようにしています。水冷エンジンというタイプです。
適温は、エンジンにもよりますが80~90℃前後に設定していることが多いです。
その適温を超えて熱くなりエンジンが壊れてしまうような状態になることがオーバーヒートと呼ばれる症状で、車に詳しくなくてもなんとなく聞いたことがあるのではないでしょうか?
オーバーヒートは重大な故障でエンジン本体の金属をゆがめて壊れる致命的な不具合です。
では、その逆のオーバークールではどのような故障を引き起こすのでしょう。
①エンジンが温まりにくい
冬場の寒い時期にエンジンを掛けると本来は早く適温にしたいので冷却水を循環させないようになっているのですがオーバークールの故障を起こしていると循環してしまうためなかなか温まらない。
②暖房が効かない
室内の暖房は冷却水の水温を利用しているため暖房の効きが悪くなります。
③エンジン制御が暖機中のモード(冷間)になってしまう
エンジンは温まった状態を通常使うことを前提としていますので、冷間時は冷えていても調子良くしようとしたり早く暖まるようにしたりと様々な制御が介入します。エンジンが温まらないとその制御がいつまでも介入してしまうため調子が悪くなったり燃費が悪化します。
このようにオーバーヒートに比べて短時間で致命的な故障を引き起こすわけではありませんが、じわりじわり調子を悪くする故障を引き起こします。
次にオーバークールを起こす原因は何なんでしょうか?
サーモスタットと呼ぶ部品が原因になることがほとんどです。
この部品が水温によって開閉することで冷却水をラジエーターに循環するかしないかをコントロールします。
よってこれが開かなくなるとオーバーヒート、閉まらなくなるとオーバークールを引き起こします。(他に原因があることもあります)
実例
ボルボ V70Ⅱ
サーモスタットが折れてしまっています。これでは閉まりません。
アルファ156JTSスポルトワゴン
ケース一体型のサーモスタットのため中がよく見えませんが片側から光を当てると光が漏れるので閉じていないことがわかります。
AUDI TTクーペ2.0(8J)
こちらもケース一体型でよくわかりませんが水を片側に入れると勢いよく漏れて来ますので閉じていないことがわかります。
このタイプはケースが樹脂な為、割れて漏れ出すなんて故障もあります。
サーモスタットはサーモワックスと呼ばれる温度で変形する部材とそれに反発するスプリングで出来ています。しかしサーモワックスは経年劣化で変形しなくなったりスプリングが弱ったり折損することで様々なトラブルを発生させます。
しかしオーバークールを気が付かずに乗っていらっしゃる方は非常に多いです。
では、どのように見極めるかといいますと、
水温計が付いているお車でしたらエンジンが暖まったらメーターの針はほぼ一定で動かなければ正常です。しかしスピードを上げて走ると温まっていた水温計の表示が落ちてきてしまう場合はオーバークールです。
また、最近のお車では水温計が付いていない車があります。そんな場合は診断機をつながなければ正確な数値はわかりません。しかし、アイドリングで長く止まっているときは暖房が暖かいのにスピードを上げるとなんとなくぬるい風になるなんて言う場合は要注意です。
冬場の寒い時期でしかわかりずらいので、メーターの針が動く・暖房がぬるいなど気になりましたらすぐに点検を受けてくださいね。