アウディA4(B9)
エンジン回転が安定せずアクセルをあおっていないとエンストしてしまうとの事でレッカー搬送されました。
故障コードを読み出してみると空燃比が濃いエラーを検出していました。
これは空燃比が濃い状態のため燃料噴射量を減らす(薄くする)ように制御が掛かっていることを表しています。
ガソリンと吸入空気の関係がガソリンが濃すぎるような状態で考えられるのはインジェクターの不良やブローバイガスにガソリンが多量に含まれていることが考えられます。
直噴エンジンでは国産・輸入車ともに起きることが多いもので直噴ポンプからのガソリン漏れです。
直噴ポンプはエンジンに直接取り付けられていて多くはカムシャフトで駆動してガソリンを高圧に圧縮します。
そのポンプからガソリンが漏れるのですが、漏れるといっても外側に漏れるわけではないのでなかなか気が付きにくい症状といえます。
直噴ポンプはエンジンのカムシャフトなどで駆動するのですが、その駆動側で漏れると漏れたガソリンはエンジンオイルに混ざりこみます。
エンジンではピストンで圧縮した際の吹き抜けガスであるブローバイガスを吸気側で再度吸い込むのですがその際に、オイルに混ざりこんだガソリンが一緒に燃焼室に混ざりこむのです。
吸気側で測定していた空気量に対してガソリンの量が多いと判断するためコンピュータで噴射量を減らして薄くしようとします。
空燃比制御が安定していませんのでエンジン回転が不安定になり今回のような症状が発生しまうのです。
それではこのような故障が起きていることをどんように判断するにはどうすればよいのでしょうか?
それは非常に簡単なことでエンジンオイルを入れるフィラーキャップを外して匂いを嗅ぐのです。
正常な状態でもガソリン臭は多少するのですがポンプからの漏れが進行した場合は多少のレベルではなく強烈なガソリン臭がしますのでおおよそ判断できます。
当店は修理工場ですので臭気だけでの判断だけでなく、ガソリン混入していることの裏付けるため点検をします。
計測器をフィラーキャップに近づけてHC(ハイドロカーボン)を測定すると計器を振り切るほどのHC濃度になっていました。
エンジンオイルを長期にわたり交換していないとHCは当然上がるのですがこちらのお車2000㎞ほど前に交換したばかりですのでこれだけHCが混入するのは異常であるのは間違いありません。
次にHCが混入していると思われるエンジンオイルをドレンから抜き取り正確に測量すると規定量よりわずかに多いことがわかりました。
これはガソリンが混ざりこんだことが原因かもしれませんが前回交換したときの調整がどれくらいかわかりませんので参考までにとどめます。
ここまで大量にガソリンが混ざりこむということは漏れ以外には考えられませんので直噴ポンプを交換することにします。
直噴ポンプ交換とエンジンオイルを交換することで内部のガソリンを抜き出してエンジンを掛けます。
診断機で空燃比をモニターすると正常な範囲を示しているためこのまま乗っていただき今後ガソリン濃度が増えなければ修理完了です。
このような不具合は突然大量に漏れ出すわけではないのでなかなか気が付かないのと高圧ポンプが高額であるためなかなか交換に踏み切れないのが問題です。
※初期の症状ではガソリンの漏れが少ないためエンジンオイル交換時期が先に訪れて混入したガソリンを排出してしまうため空燃比学習もその際にリセットしてしまうため。