ニッサン ADバン(Y12)
エンジンがブルブルしてエンストするときがあるとの事。
入庫時はやはりラフアイドルの状態で今にもエンジンが止まりそうです。
診断機を使用して故障コードを読み出すと複数シリンダーのミスファイヤーとO2センサーに関するものを検出しています。
複数シリンダーでのミスファイヤーですと独立点火なため電気的な点火系統は考えづらいですし、O2センサーがリーン側でエラーを検出していますので空燃比に起因する故障と思われます。
症状をよく観察するとエンジンはかなり不安定ですが周期的に回転が上がり落ち着くということを繰り返しています、このような症状は点火系統の不具合では起きずらい為、空燃比の不良が疑われます。
空燃比とは空気の量に対して燃料の割合のことでエンジンを正常に回すには理想的な空燃比が必要なため状況に合わせて適切にコントロールすることが必要です。
診断機をつなぎ空燃比に関するデーターをモニターしてみます。
正常な状態では100%を中間値として上下(濃い・薄い)に補正する空燃比補正値(赤い線)が、症状発生時は100%から135%まで補正が進み100%に戻るということを繰り返しています。
これはガソリンの量が少ない(薄い/リーン)のを空燃比補正という制御で濃い側にコントロールしているのですがこの車両の場合135%が限界値のためリセットされ100%に戻されているということが繰り返し起きているのがわかります。
空燃比が薄い状態を濃くしようとする制御が働いていることが起因している不具合と言えます。
まずは空燃比が本当に薄いのかそれとも薄いと勘違いしているかが故障診断を進めていく上で大きな分かれ目になります。
実際に薄くなるような要因としては、
・エアマスセンサーの特性ずれ
・エアダクト破れ(エアマスセンサー以降での2次空気の侵入)
・燃料圧力の低下
などが考えられます。
簡単に点検できるところで2次空気の吸い込みが無いか各部点検したが特になし。
次にエアマスセンサーの特性ずれを疑い他車からセンサーを拝借して入れ替えたが変化なし。
※エアマスセンサーとはエンジンに入る空気の量を測定するセンサーで、空気の量に対して燃料噴射量を決めるため基本となるセンサーです。
燃料圧力に関しても正常値を示しています。
各部を点検して本当に薄いという可能性がほぼないため薄いと勘違いしている方を疑います。
それはO2センサーの不具合です。
O2センサーを交換すると正常に反応するため空燃比補正も100%前後をわずかに行う程度になり、空燃比も正常になったのでミスファイヤーも収まりました。
O2センサーは排気ガス中の酸素濃度を読むセンサーですが今回は酸素濃度が薄いと勘違いしたため燃料を濃くしろと補正が働かせてしまいました。
※排気ガス中の酸素濃度は空燃比に対する燃焼状態に比例するため空燃比補正のフィードバックさせるための基本になるものになります。
しかし実際には薄くはないので空燃比が濃くなりすぎてエンジン不調をきたしてしまった訳です。
車両の自己診断でO2センサーを検出していたのと、データモニター上でもO2センサーの数値はほぼ変化していなかったので素直に初めからO2センサーを疑えばいいのですが、ほかの要因もつぶしたうえでの不具合部品の絞り込みを行うことで確実な不具合特定を行うことができます。
33そもそも燃料の濃い薄いは排気ガス中の酸素濃度を測定することで判断します。
燃料が濃い場合は酸素濃度が少なく、薄い場合は酸素濃度が濃くなりますので