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ブログ内の整備・修理等各記事の作業内容や作業方法のご質問にはお答えできません。 また、作業料金についても車両を当社まで入庫いただき、実際に見させていただいてからのお見積りとなります。 概算の金額についても電話やメールではお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

故障修理・整備 ルノー

ルノー ルーテシア4 突発的ユニット故障、原因の推測と対策

ルノー ルーテシア4

エンジンが掛からないとのご連絡。

電話で問診をすると”2週間くらい乗らなかったのでバッテリーがダメになってエンジンが掛からないのでは”とご本人。

しかし、よくよくお話を聞いていくとバッテリーではないのではないかと思われる節がありました。

とはいえ遠隔で直せるわけではないのでロードサービスで運んでもらいました。

 

入庫して早速点検を進めます。

バッテリーは単体点検でやはり正常レベルのため問題なくシロでした。

バッテリーは正常なのですがスロットにカードキーを差し込んでもうんともすんとも言いません。
ルノーはカードタイプのキーをスロットに差し込むことでアクセサリーがオンになります。

キーレスエントリーも作動しませんし、電源であるイグニッションもオンしない状態ですので電源系統に何かが起きているようです。

まずはバッテリーのプラスとマイナスがしっかり接続されているか点検しても特に異常は見られませんし、他にヒューズやアースにも問題ありません。

これは一筋縄ではいきそうもありませんのでもう一度問診から始め状況を洗いなおす必要があります。

お客様からこのようになった経緯を問診した結果

・2週間ほど車両に乗っていなかった。
・ヘッドライトの電球をハロゲンからLEDタイプに変える作業を自身で行った
・作業前はキーレスエントリーでドアが開き正常に作動した
・キーで開錠した後はエンジンを掛けなかった
・バッテリーをマイナス端子だけ切り離して電球交換作業を行った
・バッテリーをマイナス端子をつなぎエンジンを掛けようとしたが今のような症状が発生して今に至る

上記のような経緯とのことでした。

初めは作動していたキーレスエントリーが今は作動していませんのでこの一連の流れの中で何かが起こったと推測されます。

 

次にイグニッションオンにはなりませんが診断機でアクセスを試みます。

するとボディコントロールモジュール(BCM)とインストルメントクラスターユニットのみアクセスできました。

やはり電源に関する故障コードを検出しており故障コードを消去すると一度だけアクセサリーオンの状態になりますがエンジンはかかりません。

それ以外にもスロットにカードキーを差し込むと数回に一度アクセサリー状態になることがありました。
アクセサリーになりますがイグニッションオンになるわけではないのでエンジンは掛かりませんし車両の動作もそれ以上はできません。

配線などが原因で電気が来ない場合、電源・アースが時折作動するということは考えにくいですし、故障コードを消去した一度だけ作動するというのは配線などのトラブルではなく何かしらのユニットの電子基盤故障で起きているように考えられます。

そこでパワーマネージメントなどをつかさどるボディコントロールモジュールが怪しいと思われるためこのユニットに電源がかかってるか点検しましたが特に問題ありません。
※診断機でBCMにアクセスできたので電源はやはり来ているのです。

ここまでくるとボディーコントロールモジュール内部で故障が起きていると判断できます。

しかしボディコントロールモジュールはイモビライザー(盗難防止装置)も含まれるため当社の診断機では交換対応できないためディーラーにて作業を行ってもらうことにしました。

ディーラーでも同様の診断結果でしたが交換してみないと直るかもわからないとのこと。
※コンピューターユニットなどは電子基盤の故障は目視でわかるものではないですし、様々なユニットとの連携で作動しているため交換してみないとわからないという返答は当社も含めてやむを得ない言い回しです。



とはいえ交換後は正常に作動するようになりましたのでやはりボディコントロールモジュールの不具合で間違いありませんでした、スペアキーなども登録し直してもらい作業終了となりました。

 

ではなぜユニットが壊れたかということです。

機械ですので突発的に壊れる可能性はあるのですが、やはりきっかけになる行為もあるため考察して次に防ぐことを考えなければなりません。

お客様から聞き取りをした経緯では初めはキーレスエントリーでドアは開いたということから開錠時には壊れていなかったと推測できます。

そうなると不具合発生時までに行ったことに原因があると思われます。

・ヘッドライトバルブの交換
・バッテリーマイナス端子の脱着

電気的な影響を与えるものにはこの2点ほどしか考えられません。

考察していきます。

ヘッドライトバルブを交換したただけでこのようなことが起きるのかということです。
この車両ではハロゲン電球が標準でしたが今回はLEDタイプに交換を行いました。
ハロゲン電球はフィラメントを使用している一般的な電球ですがLEDタイプは発光ダイオードを光源とする比較的新しいものになります。

LEDは消費電力が少ない割に明るく白色に光るため人気があります。しかし、自動車メーカーが設計の段階からLEDを考えていたのなら良いのですが、あとから交換するタイプにはある程度リスクが伴います。

それは欧州車では一般的な球切れ警告システムです。それはハロゲン電球の抵抗に対する電流変化を読み取って球が切れたことを知らせるためLEDにしろHIDにしろハロゲン電球と同等の抵抗を回路に組み込まなければなりません。

その抵抗が何かしらトラブルを起こしたり内部にある基盤故障が発生した際ボディーコントロールの回路にダメージを与える危険性がリスクになるのです。

従来のハロゲン電球では電球自体で断線(球切れ)は起きてもショートというものはあまり考えられなかったのですが、LED/HIDではショートも断線も起こりうるためショートに対する保護が回路の設計で想定されているかということが問題になります。

ショートしてもヒューズが切れて保護してくれるから大丈夫と思われますが、実際にはヒューズが切れる前にユニットが壊れる事象は発生しています。

今回は、日本製の新品LEDでしたので故障への関連性は薄いと思われましたが、高額の新品ユニットを使い検証するわけにはいきませんのでご説明の上、ハロゲン球に戻していただきました。

 

次にバッテリー端子の切り離しです。

バッテリー端子のマイナスを切り離しただけなのに何かが起きるものでしょうか?

バッテリ端子の脱着の際にサージ電圧と呼ばれる大電圧・電流が瞬間的に発生することがあります。

コンピューターユニットなどの電子機器は低電圧で制御していますのでこのサージ電圧で破壊されてしまうという事例は現代車では非常に多い不具合となってきています。

 

ではバッテリーを脱着するだけでサージ電圧が発生するのでは交換のたびにコンピューターは壊れてしまいますのでどうすればよいのでしょうか?

まずはサージ電圧が発生しないような手順を行うということが基本となります。

車両はエンジンが掛かっていない状態(鍵を開けたりエンジンを止めた直後など)でも電気的には動作を行っており比較的大きな電気が流れています。

このように大きな電気が流れている状態でバッテリー端子を切り離すと電位差が大きいためサージ電圧が発生しやすくなります。

そこで完全に待機状態(スリープモード)になって車両の消費電力を抑えてから脱着を行うことで電位差を小さくしてサージ電圧を起こしづらくすることが大切になります。

自動車が待機状態になるまでにはメーカーによって時間が様々なのですが、20分以上かかるメーカーもありますので注意が必要です。

しかし、見た目で待機状態になったかわかりませんし我々のような整備を行うものはいつまでも待っているわけにいきません、たとえ待機状態になったとしても何かの拍子(ドアの開閉など)で起動してしまうことも考えられますので対策を講じます。

この装置はメモリー用のバックアップ装置で、車両側に電気を供給することでバッテリーとの電位差を減らすことが出来ます、供給できる電流も6Aと大きなものですので安定して電気を供給することでサージ電圧をある程度防ぐことが出来ます。

一般的にメモリー消失を嫌いバックアップする(ラジオや時計のメモリー)役割だけでこれだけの高額の装置は必要なく乾電池でできるのではないかという方もいらっしゃりますが、目的がサージ電圧を発生させないようにするという目的であればこれだけ大掛かりな装置が必要だということがわかるかと思います。
※乾電池で電圧は作れてもこれだけ大きな電流は流すことが出来ません。

目的がサージ電圧対策だとすればバックアップ装置も大きな電気を安定して供給できるタイプではないと意味がありません。

 

次に上記のような装置を使用していても起きてしまうサージ電圧に対してはこのようなもので更なる対策します。

これはいわゆる大容量コンデンサーで発生したサージ電圧をコンデンサーに吸収する装置になります。

本来は鈑金作業での電気溶接の際に流れる瞬間的な大電流・電圧を吸収して電子機器を保護するのが主な目的ですが当然バッテリー脱着の際に発生するサージ電圧にも対応することが出来るものになります。

このように起きないようにすることと、起きてしまったものに対する対処の両方から対策を行う必要があります。

もしかしたら今回はバッテリーの脱着を行った際にサージ電圧が発生してユニットを破壊してしまったのかもしれませんが、起きてしまったことの原因の検証はできるものではありません(わざわざ新品のユニットを使い検証することは実質不可能ということです)ので推測にとどまります。

私たちのような整備業では起こりうる可能性に対しては対策を講じるしかありませんのでできうる限りのことは行いますが、従来バッテリー脱着などの簡単な作業はDIYでも出来たのですが電子機器が多数搭載されている現代車では大きなリスクを伴う作業のひとつになってしまいました。

 

 

 

 

 

 

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