トヨタ ハイエース(KDH200)のご入庫
エンジン回転が不安定になりエンジンチェックランプが点灯してエンストするときがあるとの事
診断機をつなぎ故障コードを読み出します。
故障コード:P0088 燃料制御弁異常(高レール圧)
燃料圧力の異常を訴えてきています。
現代のディーゼルエンジンはコモンレールタイプを採用しています。
これは従来のディーゼルエンジンではインジェクションポンプと呼ばれるもので高圧燃料を燃焼室に噴射していたのですが、コモンレールタイプは従来のタイプよりもさらに数倍に圧力を上げた超高圧燃料圧力をコモンレールに溜めて電子制御インジェクターで精密に噴射コントロールしています。
この"燃料圧力が高すぎる"と故障コードで知らせてきているのです。
では、この燃料圧力はどのように作られているのでしょうか?
コモンレールタイプでは、燃料タンクからきた燃料をサプライポンプと呼ばれるポンプで圧縮して超高圧にしてコモンレールに蓄圧しています。
次に、この圧力が高すぎるということはどのようなことなのでしょう?
サプライポンプにはサクションコントロールバルブ(SCV)というものが装着されていて、このバルブで燃料圧力のコントロールをリニア(デューティー制御)に行います。
こちらの車両ではどのように燃圧が変化してるかモニターします。
コモンレールの目標燃圧(赤線)に対して燃料圧力の実測値(緑線)がかなり遅れて変化しているように見られます。
目標値に対して燃圧が下がるのが遅く、その瞬間は目標値に対して燃圧が高いためその部分で燃圧が高いと判断したと思われます。
どうやらこのエンジンではSCV不具合が多いらしく対策SCVが現在では供給されているとのこと。
燃圧が目標値に対してリニアにコントロールできていないようなのでSCVを交換することにします。
SCVの形状は全く違いますので、対策のためSCV自体を設計しなおしているようです。
SCV交換後の燃圧値は御覧のようになりました。
燃圧が目標値に向かって細かく変化してコントロールされているのがわかります。
エンジン回転も不安定になったりエンストも起きなくなりました。
ちなみに燃料関係の整備を行う際に忘れてならない部分で燃料フィルターがありますが、もちろんここも同時に交換します。
真っ黒になっています。
燃料フィルタの下流にはサプライポンプやインジェクターなど高圧で精密にコントロールされる部品がありますので汚れは禁物です。
燃料に含まれる不純物をろ過しているのですが、この汚れ具合を見ると定期的に交換が必要なことがお分かりいただけると思います。
現代のディーゼルエンジンは排気ガス中の有害物質の排出量がかなり減ったのですが、それを実現するにはこのようなシステムで緻密にコントロールされていることで成り立っているのです。
今回の不具合は部品故障でしたが、精密なシステムほど汚れには弱いものですのでメンテナンスも非常に重要なものになります。