ホンダ インサイト(ZE1)のご入庫
平成17年式の初代インサイトで特徴的なデザインをしています。
車検整備でのご入庫ですが運転席のパワーウインドウが動かないことを訴えられていました。
以前、運転席のパワーウインドウを操作した後に煙が出て、パワーウインドウモーターを中古品で交換した経緯があるとのことでしたが、しばらくしてまた動かなくなってしまったそうです。
点検を始めます。
パワーウインドウモーターにかかる電気を測定すると正常にかかっているようです。
次にパワーウインドウモーターに直接、12ボルト電圧を掛けますがモーターは回りません。
やはりモーター本体に異常があるようで、モーターの抵抗を測ると無限大ですので内部で断線しているのは間違いなさそうです。
ここからが問題です、以前中古品で交換したのはその時にすでに新品が製造廃止になっていたからなのです。
今回も当然新品はありませんし、時が経っているので中古部品も見つかりません。
何とか直さなければいけませんのでまずはモーターを分解してみることにします。
モーターケースを外すとやたら金属粉が出てきます。
一般的なモーターですのでこのようにコイルが入っています。
ブラシが接触するコンミテーターが少し荒れています。
ブラシとはコイルに電源を供給する部品なのですが、回転部分に給電するのでブラシは滑りながらコイルに接触します。
しかし、2か所あるべきブラシホルダーの一つは破断して転がり落ちてしまっていました。
多量に出てきた金属粉は個々の接触で起きたもののようです。
ブラシがなければ電気回路は成り立っていませんので抵抗を測っても無限大になるわけです。
ブラシを支える部分は非常に薄い金属ですので何かで代用するのは非常に困難ですので、以前焼き付いてしまって交換したモーターをお客様はとっておいたのでここからブラシホルダーを摘出できないかチャレンジしてみます。
確かにかなり焼き付いてしまっています。
焼けて溶けてしまったモーターから何とか摘出したホルダーとブラシ
これを欠損した部分に移植しました。
荒れたコイルもきれいにして組付けます。
移植修理してこのように正常に動くようになりました。
前回の不良部品を取っておいてくれたので何とか直すことができました。
ちなみに前回の中古品交換の際、パワーウインドウスイッチも同時に交換したそうです。
交換理由は運転席スイッチのノブの節度がおかしく中立位置に戻らなくなったためとのことでした。
このスイッチの故障が原因でパワーウインドウを動かした中立の戻らず、ずっと接点がつながったこと(通電しっぱなし)によりモーターに長時間通電して焼き付いてしまったようです。
本来、長時間通電した場合ブレーカーのようにシャットダウンするようにできていますがどうもうまく作動しなかったようです。
前回の修理の際に、パワーウインドウスイッチは交換済みですのでこのような不具合の再発はないと思われます。
今回は何とか修理できたのは幸いでしたが平成17年式くらいでこのような部品供給が無くなるのは今後不安要素といえます。