FIAT PANDAⅢ(312)のご入庫
デュアロジックのエラーが出てギアがつながらず走行できなくなり搬送されてきました。
入庫時はエラーでシフト操作がうまくいかない状態でしたので診断で故障コードを読み出します。
デュアロジックではよく検出される故障コードですが、クラッチに関するものも拾っていますので、故障コードと実際に起きている症状を照らし合わせて探求します。
症状は警告灯が点灯してギアがうまく入らなかったり、リバースにしたときギア鳴りが起きます。
ここでリバースギアのギア鳴りが注目すべき症状になります。
リバースギアに入る時にギア鳴りを起こすということはエンジンからの動力をクラッチがうまく切断できていない可能性があるからです。
リバースギアにはシンクロ機能はなく、ギア同士が直接嚙み合うためクラッチがうまく切れないと歯車の当たる音がギア鳴りとして現れます。
前進ギアではシンクロがあるためなかなかギア鳴りとしては症状は現れませんが無理やりギアを入れているので”トン”とショックが伝わってきていました。
デュアロジックシステムの中でもクラッチに関係したトラブルであることが絞れてきました。
次にデーターの中でクラッチの劣化度をモニターしてみると一般的な数値とかけ離れた数値が出てきました。
新品で組んだ場合おおよそ3000台の数値なのですが559とかなりずれています。
デュアロジックユニット自体の問題というよりもクラッチ本体に何か問題が起きていると推測できますので、まずトランスミッションを外してクラッチオーバーホールをベースに作業を進めることになりました。
トランスミッションを外してクラッチを点検するとクラッチカバーとクラッチディスクの中心軸にずれがあります。
軸のずれはクラッチを取り外すと真の原因が姿を現します。
悪名高いダブルマスフライホイールの中心にあるベアリングが破損して芯がずれてしまっています。
これでフライホイールの偏芯によりフライホイールに付くクラッチシステムに不具合が起きたことが確定しました。
このトラブルでさらに被害を大きくするのは偏芯したフライホイールがトランスミッションのレリーズベアリングガイドを削り破損させてしまうことです。
やはりこの車両も被害は広がっていました。
この部分を交換するためにはトランスミッションも分解しなければならないため部品代・工賃ともに大きく膨らんでしまいます。
レリーズベアリングガイドはベルハウジングと一体のためこのような部品の交換になってしまいます。
フライホイールの不具合があればクラッチストローク量も大きく逸脱しますので劣化度にも表れます、交換後は正常な値を示すようになりました。
実は作業着手前に、ここまでの被害が想定出来ていたためお客様には最悪の事態をお伝えしていました。
こちらの車両中古車で購入してまだ数か月しか経っていなかったとのことですので、故障は購入した時点で始まっていた可能性があります、最悪の事態に至ってしまったことは残念でしたが修理を完了してようやくこの車両本来の姿を取り戻すことが出来ました。
3代目PANDA(312)はフィアット500のツインエアと同じエンジンを搭載していますが、500がソリッドのフライホイールを使用しているのに対してパンダはデュアルマスフライホイールを使用しているという点で違いがあります。
デュアルマスフライホイール自体フィーリング的にメリットがあるのですが、この車両に使用しているフライホイールは耐久性の信頼度が低すぎたのが問題です。
※デュアルマスフライホイールの故障が起きるPANDAに関しては最悪の事態に至る可能性があることを見越したご説明をしたうえで作業に着手いたします。
今回ご紹介した事例のようにクラッチ関係のみの故障もあるのですが、デュアロジックユニットに関係する不具合も重複していることがあるのですが、まずはクラッチの修理を行わない限りデュアロジックユニットの判定はできません。
段階を経て進めていくことになりますので、メカニカル的な説明と金銭的なご説明が重なり合いご説明が長くなりますので対面でお話しが出来ない方では、修理の受付は行いませんのでご理解のほどよろしくお願いいたします。
上記理由のため金額的な問い合わせに関しても電話・メールでは受け付けておりません。