BMW Z3
ご依頼は親族の形見の車両を動けるようにしてもらいたいとの事
この車両は主がいなくなってから放置されて何年も動かしていない状態(約7年)との事で不安でしたが、保管先に向かうと屋内にあり想像以上に保管状態は良い状態でした。
とはいえ7年も動かしていない車両がいきなり動くわけはありませんので、各部点検したうえで進めなければなりません。
まずエンジンをいきなり回すわけにはいきませんので、シリンダー内にオイルを回すために手でクランクシャフトを回してオイルを潤滑させます。
次に燃料を噴射できない状態で新しいバッテリーに交換してクランキングをして正常に圧縮するか試した結果問題なさそうな圧縮音がします。
最後に燃料を点検しますが、ガソリンは置いておくだけで劣化したり揮発してしまいます。残ったガソリンの残留物は燃料系統にダメージを与るためここが一番の難関となります。
やはり燃料タンク内の臭いを嗅ぐと劣化した燃料の臭いがします。
燃料ポンプも作動音がしません。
ガソリンの残留物などで固着してしまっている可能性がありますので、ポンプを取り外してみます。
取り外したポンプはこちら。
燃料で固着したのではなくタンク内の水分で錆びてしまっていました、タンク内の結露などの水分で錆びてしまったのでしょう。
このモデルもだいぶ年数が経ち燃料ポンプは、国内で流通していないため海外から取り寄せ交換することにしました。
当然燃料タンク内の汚れも綺麗にした上で、燃料フィルターも交換します。
交換後新しいガソリンを給油してエンジンを掛けると何事もなかったかのようにエンジンは息を吹き返しました。
タンク内は酷い状態だったのですが、燃料ライン内は外気に触れずそれほどガソリンは傷んでいなかったようです。
信じられないくらいエンジンは正常に作動しますので、各部油脂類やブレーキなど他の部分もメンテナンスを行い走行テストを行います。
しかし走行させてみるとガタガタひどい車体振動でまともに走行できません。
原因はタイヤにフラットスポットが出来てしまい振動を発生させました。
長期間車重がかかった状態だったため、タイヤの一部がつぶれて平らになり丸くなくなったことで振動が起きていました。
タイヤの劣化が原因ですので新しいタイヤに交換します。
タイヤを4本交換して再び走行すると、昨日まで普通に走っていたかのように何事もなかったかのように走行することが出来ました。
放置される前も手入れが行き届いていたのと、保管の状態が良かったためこの程度の整備で永い眠りから目が覚めることが出来たのでしょう。
自動車は愛車として大切にされることが多く、このようにオーナーがいなくなって時間が経ってしまった車両を目覚めさせてほしいというご依頼は結構あるのですが、やはり一筋縄でいかないことが多いです。
そんな苦労ののちにでも、愛着のある車両を引き継いでもらえることは車両もそうですが元のオーナーも幸せに思っているのではないでしょうか。