VW シャランのご入庫
以前、エアコン(冷房)の効きが悪いとの事でご相談を受けていました。
その際は、エアコンガスの減少による効きの悪さが考えられるため冷媒ガスの測定及び調整を行いました。
結果ガスも減っており規定量をいれるとエアコンの効きも回復しましたので問題ないと判断しました。
※冷媒回路は正常な状態でも少しずつガスは減少します。
今回は別の不具合があり入庫しましたがその際、後席のエアコン(冷房)の効きが弱いとのご指摘を受けました。
前回のガス調整から半年もたっていませんのでガスが抜けたとは考えられませんし前席のエアコンはキンキンに冷えるのでガスは入っているとひとまず判断します。
しかし、後席のエアコンは明らかに冷房は出ておらず常温の風が出てくるだけです。
こちらのお車はデュアルエアコンという前席と後席にエアコンユニットを搭載したモデルになります。
図で示すとこのような構造になっています。
室内を冷やすエアコンユニットが前席と後席で並列に装着されています。
冷媒の回路としては1系統ですので前席の冷房が効くということはエンジンルーム内のシステムには異常がないと判断できます。
ではどこで前後に差が出ているかを探ります。
図に示した青と赤のラインは配管で色の通り赤は熱く青は冷たくなるのが正常です。
しかし、後席ユニットに向かう配管はどこも熱くも冷たくもありません。
これは冷媒が循環していないことが考えられますが前席が正常に効いている以上コンプレッサーから冷媒ガスが圧縮されて送られているのは間違いないのでエンジンルームと前席ユニットは正常であると判断できます。
そこで後席ユニットの冷媒回路の中で詰まりを起こす可能性が有る部品を見てみることにします。
後席エアコンユニットのエキスパンションバルブという部品です。
エキスパンションバルブを外して中を覗くと何か異物のようなものが見えます。
ピンセットで異物を取り除きます。
異物を取り除くと穴がしっかり開いているのが確認できます。
この異物がエキスパンションバルブを詰まらせて冷媒が回らなくなったのは間違いありません。
エキスパンションバルブは高圧・液体の冷媒ガス(図の赤のライン)をこの針の穴を通すことで霧吹きの様に気化させます。
その気化熱を利用してエバポレータを冷やして冷たくするのです。
清掃したエキスパンションバルブを組み付け、新たにガスを入れ直すと今度はしっかり後席も冷房が効くようになりました。
エアコン修理の際エアコンのガス圧を高圧・低圧でどれくらいになるのか測定して不具合判断します。
しかし、シングルエアコンではエキスパンションバルブが詰まれば圧力に異常が現れるのですが、デュアルエアコンですと並列に並んだユニットの片方が詰まったとしてももう一方が流れるので圧力の異常は現れなかった訳です。
異物自体は何なのかは不明ですが製造工程で紛れ込んだものかドライヤーと呼ばれる除湿剤が回路には組み込まれているのですがその除湿剤の一部かもしれません。
兎に角、後席の冷房がキンキンに冷えるようになりホッとしたのも、つかの間 今度は暖房が出てこないことに気が付きました。
まだほかにも不具合があるようです・・・
つづく