FIAT パンダⅢ(312)のご入庫
ご用命はデュアロジックのギアが抜けたり、振動も大きくなったとの事。
ツインエア搭載のこちらの車両、2気筒エンジンで元々エンジンの振動は大きめなのですが正常時には出ない大きな振動が起きています。
故障コードを読み出してみるとクラッチストロークエラーを読み出しています。
クラッチも正常に作動できていないのでクラッチオーバーホールをする必要があることをお話しして作業に取り掛かります。
ミッションを取り外しクラッチを観察すると何かおかしいです。
レリーズベアリングの当たった跡が偏芯しているし、クラッチディスクの中心もカバーとかなりずれているように見えます。
クラッチカバーを外してみると!フライホイールのベアリングの鉄球が飛び散って中心がずれているではありませんか!
さらにトランスミッション側にも悲惨な状況が待ち受けていました。
偏芯して回ったことでクラッチカバーのスプリングが当たり、トランスミッションのレリーズベアリングのガイドまで削れてしまっているのです!
この故障の原因の張本人はフライホイールです。
このフライホイールはダブルマスフライホイールと呼ばれる2分割タイプのフライホイールで中心部を軸にして回転方向にずれる仕組みになっています。
これはシフトのつながりなどをスムーズにするためのもので、2分割をベアリングでつないでいるのですがそのベアリングが破損したことで不具合を発生させました。
フライホイールとクラッチセットすべてを交換します。
次に問題なのはトランスミッションです。
レリーズベアリングの摺動部分をガイドしている部分が削れてしまっているのですがこの部分はトランスミッションケースと一体で交換はケースごとになるためミッションの分解も必要になります。
フロントケースを交換します。
ここまで交換をしなくてはなりませんでした。
交換して不具合は解消しましたがこのダブルマスフライホイールという爆弾は、明らかにベアリングの容量不足(耐久性)が原因です。
これは設計時点の問題ですが交換したフライホイールが対策品になっているかは不明です。
こちらのお車走行距離60000kmほどで、新車からワンオーナーで乗られていて決して使用方法に負担が掛かっているわけでもないにかかわらず起きた不具合ですので非常に不安なものです。
このモデルではマニュアル/デュアロジック問わず不具合が多発しているようですので変な振動など感じた際は早めに点検や交換をした方がよさそうです。
また、ダブルマスフライホイールは現在ではメーカー問わず多くの車両に採用されています。
クラッチが摩耗するほど走行距離が伸びた場合などは、フライホイールのベアリングも傷んでいることが予想されるので予防的な観点からもオーバーホールの際はクラッチと同時にフライホイールも交換をしておいたほうがよさそうです。