VW ゴルフ5 ヴァリアントのご入庫
ご用命は、エアコンが急に効かなくなったとの事
このモデルの年代で車種問わず多い不具合であり嫌な予感がする訴えです。
故障事例で何回かご紹介しているコンプレッサーの故障が突然起きるからです。故障事例リンク
点検しますとエアコンガスはしっかり入っています、ますます嫌な予感がします。
クランクプーリを回してベルトを動かすとエアコンコンプレッサーの中心のシャフトが回りません。
このコンプレッサーは可変容量タイプですのでプーリーとシャフトは元々一体ですのでプーリーだけ回るということはシャフトとプーリーの弱点部が破断していることを表します。
コンプレッサーが焼き付きシャフトが回らなくなった場合、この弱点部が破断することでプーリーはコンプレッサーと切り離され、空回りすることでベルト切れを防ぎ走行を続けることが出来るようになっています。
※エアコン以外のシステムを正常に作動させ走行不能になることを回避します。
問題はここからです、コンプレッサーが焼き付きを起こした場合、完治させるには高額な修理費用が掛かります。
エアコンの冷媒システムはこのようになっています。
エアコンガス(冷媒ガス)をコンプレッサーで圧縮して、圧縮ガスの膨張時の気化熱を利用して冷やし、冷やし終わったガスをまた圧縮してを繰り返すのです。
コンプレッサーが焼き付いたならば、”コンプレッサーを交換すれば治る”のではないか思われるかと思いますが、コンプレッサーを交換しただけでは一時的に治ったようになりますが、先ほど申した”完治させるには”と言った意味では不十分で再発の恐れがあるのです。
冷媒ガスは回路をぐるぐる回ります、その際ガスだけではなくコンプレッサーの潤滑のためのオイルも一緒に回っています。
コンプレッサーが焼き付きを起こした際は、焼き付いた時に発生した鉄粉が一緒にガスとオイルに交じり回路中にまき散らしてしまうのです!
いくら新しいコンプレッサーに交換したところで、回路に残った鉄粉はやがて通路を詰まらせたり、コンプレッサーに侵入して不具合を再発してしまいます。
ではどうすれ良いのでしょうか? 答えはこちらです。
エアコンシステム全体の交換です。
エバポレーターやコンデンサーは内部が複雑に入り組んでいるため内部洗浄は不可能ですし他の部品も洗浄は出来ませんので交換しかありません。
ホースも出来れば交換したいのですが予算の都合もありしつこく洗浄をして不純物(鉄粉)を除去します。
ここまでのことをしない限り、この不具合を完治させることは出来ないため高額な修理費用となり頭を痛めるのです。
実際車両からこれらの部品を取り出すにもエンジンルーム・室内共に大掛かりに分解をしなければならず工賃も膨らみます。
このような大がかりな修理になってしまうことはお分かりになられたかと思います。
そもそもなぜこのコンプレッサーは焼き付きを起こしたのでしょうか?また防ぐ手立てはなかったのか?ということになるのですが、このコンプレッサーは可変容量タイプと呼ばれるタイプでエアコンのON/OFFに関係なくエンジンと同じだけ回転させられるタイプになります。
内部の弁の開閉で圧縮量を調整してエアコンの効きを細かくコントロールすることが出来るため、性能的には従来のマグネットクラッチを使用した固定容量タイプに比べると優れているため、最近広まってきているタイプです。
ただコンプレッサー本体が常に回り続けていることが今回のような焼き付きに結びついていると思われます。
従来の固定容量タイプはエアコンOFF時はマグネットクラッチは切り離されコンプレッサー本体は回りません。
可変容量タイプはエアコンOFF時でも圧縮はしませんが本体は回され続けてしまいます。
内部は回り続ければいくら空回りとはいえオイルは劣化して潤滑性能も落ちてきてしまいますので最終的に焼き付きに結びついてしまいます。
エンジンオイルの様に定期的にオイル交換ができるものでもありませんので、劣化したままのオイルを使用し続ければこのような不具合が起きてしまうというわけです。
唯一、分解をしないでオイルの性能を回復もしくは向上させるのはケミカルメーカーで販売しているようなコンプレッサーオイル添加剤になると思います。
当店では、定期的にガス量調整を専用機で行い、その際にこのような添加剤を補充することをお勧めしています。
目的は、タイヤの空気の様に少しずつ減っていくエアコンガス量の再調整と、測定の際に一緒に出てくる劣化したコンプレッサーオイルを回収して添加剤を補充することです。
方法は、内部のガスを一旦機械に回収してガス量を測定して減ってる分を補足して規定のガス量を再注入します、その際ガスと一緒にコンプレッサーオイルもわずかに抜けますので補充を兼ねて添加剤を入れるのです。
システム的に脆弱ともいえるので、抜本的な解決策ではないともいえるのですが、このようなメンテナンス方法を用いることで少しでもコンプレッサーに負担を掛けないようにして長持ちさせるかが肝になると思います。
もちろんどのタイプのコンプレッサーにも有効なメンテナンスと言えます。