ニッサン PAO(パオ)のご入庫
平成2年式でとても懐かしい車ですね、当時マーチをベースに製作されたパイクカーと呼ばれた車種です。
ご用命は、”この車を購入したばかりだが なんとなくブレーキペダルの効き始めるところが深い感じがする” ”もともとこんなものなのか異常があるのかわからない”とのこと
走行テストをしてみると、ブレーキの効き自体に問題は感じられません、しかし指摘の通りブレーキが少し深い感じはします。
リフトに上げて点検をしてみると後ろのブレーキの隙間が上手く調整されていないのがわかりました。
後輪を回してみるといつまでも回り続けますね。実はこれは隙間調整が広すぎてシューとドラムが全く擦れていないため回り続けているのです。
ドラムブレーキは、名前の通りドラムがかぶさっていてその内側でブレーキシューが広がり突っ張ることで制動力を発生させます。
ブレーキシューのライニングもかなり薄くなっていましたので交換してから調整を行います。
隙間は、サイドブレーキを引くことで自動的に調整できる仕組みになっていますがこの自動調整は大雑把なものでブレーキのタッチを左右する細かな調整はできません。
そこで、整備士がアジャスティングスクリューで細かな隙間調整をする必要があるのです。
ドラムをかぶせた状態で裏側のサービスホールから先ほどのアジャスティングスクリューを回して隙間の微調整を行います。
※サービスホールが無い車種もあります。
調整後のタイヤの回転がこちら
かすかに擦りかつ引きずらないという調整が必要になります。
ドラムが円であるのに対してシューは構造上真円ではないので隙間を狭めるとわずかに擦れるのです。
この擦れ加減が隙間調整で重要になります。
適切な調整によりブレーキペダルの深さも上がりましたし、制動初期の前のめりになる姿勢変化も緩和されました。
前輪に採用されてるディスクブレーキは、構造上調整を行うことが出来ません。後輪がドラムブレーキを使用している場合この隙間調整不良によって単にブレーキペダルが深くなるだけでなく、前後で制動し始めるタイミングがずれるため制動時の姿勢に大きく影響するのです。
本来、車検の際などに調整することは当たり前なのですが、車検後なのに隙間が広いままの車両をよく見かけます。
最近の車検整備でよくある事なのですが整備士がテスト走行をしなかったり、ブレーキのタッチに関する重要性の甘さや整備士自体の感度の低下がこのようなことを引き起こしているのかもしれません。