FIAT 500のご入庫
”突然ニュートラルになって走行が出来なくなった”との事
定番のデュアロジックユニットの故障の可能性がありますが、実はこちらのお車以前から異音が出ており”そろそろクラッチがだめになる”と注意していました。
異音はベルト鳴きのようなキュルキュル音です。
これはクラッチのレリーズベアリングから発するベアリングが焼き付く寸前の音で、焼き付いてしまえばクラッチの操作が出来なくなりますのでそのような注意をしていたのです。
ではトランスミッションを降ろしてクラッチを見てみますと、案の定、レリーズベアリングが焼き付いて破損しています!
これではクラッチを操作することが出来ませんので走行不能になるのは当然です。
クラッチカバーのスプリング部分も、破損したレリーズベアリングの当たり方が酷く荒れています。
ダイヤフラムスプリングはこのように爪が並んでいるのですが、スプリングにベアリングが均等に押すことが出来なくなるとスプリングも均等に効かずプレッシャープレートが傾きクラッチディスクが部分的な滑りを起こします。
滑った痕はこのようになります。
このようになった部品はすべて交換になるのは当然のことですが、デュアロジックシステムの場合この部分のみの部品交換では不十分です。
それはクラッチをデュアロジックシステムがコントロールするということはメカが人の代わりにどれだけクラッチを操作しているか測定をしながら動作をするからです。
測定自体とても細かなことですのでそれぞれの部品に摩耗が発生していると、そのわずかな摩耗が積み重なり測定値の操作限界値を超えてしまうことにつながります。
この部品はクラッチフォークを動かすレバーですが、デュアロジックのクラッチオペレーションロッドで押されて動きます。
ロッドで押されている部分は摩耗しますので同時に交換する必要があります。
写真ではわかりづらいですが摩耗で段付きが起きています。
実際にここの摩耗が酷いとクラッチをオーバーホールしてもストロークエラーを検出することもあります。
デュアロジックユニット自体も摩耗が進みますのでひどい場合はユニットの交換が必要になります。
このような部品はすべて交換になりますが、プレッシャープレートの相手になるフライホイールは交換しませんので平面研磨を行います。
話は少しそれましたが、デュアロジックシステムは信号待ちなどの一時停車時はシフトレバーをニュートラルにしてもクラッチを切り続けたまま待機します。
クラッチを切るということはレリーズベアリングがクラッチスプリングを押し続けているため大変ベアリングに負担をかけることになり、渋滞や信号待ちなどのシチュエーション(クラッチを切って待機している)の多い場合は走行距離が短くても今回のような不具合が発生しやすくなります。
残念ながらベアリングの設計がマニュアルミッション時代から変化していないためベアリングの容量が足りていませんのでこのような不具合が発生します。
ベルトの鳴くような音がクラッチ付近から聞こえるようになりますと近いうちベアリングが破損して走行不能になりますので、お早めにクラッチオーバーホールを行う準備をしてください。