ノーマルタイヤ(サマータイヤ)とスタッドレスタイヤ(冬タイヤ)の履き替え時期になると必ず何件かご依頼があるのが、ハブボルトの折れや、ねじ山のつぶれなどです。
今回は、ハブボルトが折れてしまったとのことでご依頼を受けました。
ご覧のようにポッキリと折れています。
お客さまにどの様に締めたのかお話を聞いてみると十字レンチで踏んで締めたそうです。
このような締め方では、締めすぎ(オーバートルク)でハブのボルトが強度を越えれば折れてしまいます。
お客さま自身、他のボルトも締めすぎでのびていることを確認していて、いつ折れるかわからない恐怖で、全数替えることをご希望されました。
こちらのお車、1輪で5本使っているので大変です。
私たち整備士がエアインパクトレンチで”ダッダッダッ”と緩めたり締めたりする姿を見たことがあるのではないでしょうか。
私たちは速さも求められるのでインパクトレンチを使用するのですがゆるめるのも締めるのもこれで終わりではありません。
ホイールナット(ボルト)の締め付けには、基準の締め付けトルクが決められていますが、まずはインパクトレンチを使用しても基準のトルク以下で締め付けます。オーバートルクを防ぐためです。
その後にトルクレンチというものを使用して基準のトルクに合わせて締め付けます。プリセット式トルクレンチは締めつけトルク値をセットしてそのトルクに達するとカチッと知らせてくれるレンチです。
トルクレンチでしっかりと締め付けトルクを管理することで緩かったり締めすぎにならないようにしています。
では、一般ユーザーの方がプライベートで替える際はどうしているのでしょう。
先ほどの十字レンチや車載のレンチを使用しているのではないでしょうか。
この工具は、応急用に車載しておくことを目的としているため大変コンパクトに作られています。
トルクレンチと比べてとても短いのがお分かりになると思います。
大体、ホイールナットの締め付けトルクは10kgf-m(約100N・m)ほどです。
このトルク値は、仮に1mの長さのレンチがあったらハンドルに10kgの力をかけると支点部分(ねじ部)に10kgf-mの力が掛かるということです。
私のトルクレンチは0.5m(50cm)ですので、ハンドルに20kgの力を掛けると締め付けトルクが10kgf-mになるというわけです。
車載工具などは、0.2m(20cm)ほどしかありませんので握り手に40kgぐらいの力が必要になります。
しかし、問題はこのようなことをしている姿を見たことがありませんか。
体重を掛けたり、最悪レンチに乗って締めるようなことをしていることがあります。
さすがにこれでは40kg以上の力がかかってしまいます。
緩むのが怖くてこのように強く締めるのでしょうが、結果ボルトを折ったり傷めますので厳禁です。
また、レンチの使用中転んで怪我をしたなんてことも聞いたことがあります。
40kgほどでしたら大人の方なら少し体重を掛けた程度で十分です。
また最近ではトルクレンチもだいぶ安く手に入るようになりました。
正しい交換方法で安全に交換してください。