VW ゴルフV GTIのご入庫
”エアコンが効かない” ”ぬるい風しか出ない”との事
基本的な点検を進めていきます。
①エアコンガスは入っていますが冷媒圧力は上がりませんのでコンプレッサーが回っていないようです。
②診断機を当ててフェイルセーフが掛かっていないか点検しますが電気的な制限は掛かっていません。
ライブデータ(コンピュータ上での)でエアコンコンプレッサーへの電気信号のON/OFFは正常に作動しています。
③実際にコンプレッサーに掛かる電源も正常に来ています。アース側はプレッシャースイッチが介入していますのでとりあえずバイパスしてアースに短絡してみます。(プレッシャースイッチの不良もよくあります)
しかしコンプレッサーはそれでも回りません。
残るはコンプレッサーですが、点検してみると・・・
プーリー内部のリミッターが破断しています!!
このコンプレッサーは、従来のマグネットクラッチでON/OFFするタイプではなく、常時駆動の可変容量タイプが使用されています。
プーリー内部にマグネットクラッチを内蔵して、クラッチのON/OFFでエンジンからの動力を伝えコンプレッサーを廻していました。
マグネットクラッチがOFFの場合動力は伝わりませんでしたのでコンプレッサーは全く動かない状態でした。
しかし可変容量タイプは、常にエンジンにコンプレッサーが回されているため焼き付きなど異常が起きた場合このプーリー内部の弱点部分が破断してエンジンと切り離すことで走行不能になることを防ぐ仕組みになっています。
後者のタイプはコンプレッサーが壊れてから切り離すので予防的な整備が出来ません。
オーナー様 実は以前からベルト鳴きの症状が出ていて鳴き止めスプレーをベルトに塗布していたそうですが、実はコンプレッサーの軽い焼き付きで回されなくなったときにベルトがスリップしていたようです。
黒い粉はベルトかすです。
今回トラブルを起こしたタイプのコンプレッサーは最近国産車でも採用されています、流動弁のコントロールで冷媒圧力をコントロールできるのでマグネットクラッチタイプより細かな圧力制御ができるのでコンプレッサーによる駆動ロスが少ないのが利点ですが、常に回されているためエアコンを入れていなくても傷んでしまうことは避けられません。
最近の自動車は、エコなどの観点からはとてもよくできているのですが部品の信頼性や故障時の部品代の増加(ユニット全体での交換等)など、旧来のものに比べ修理の金銭的負担が大きなシステムが多くなっているような気がします。
何事も早期発見で故障範囲を最小限に食いとどめることは大切なことですが、すべてを発見する事ができないことや防ぎようのない故障が非常に悩ましい問題なのです。