ニッサン セレナ(C25)のご入庫
”信号待ちなどで停車したときエアコンがぬるく効かなくなる・走行中は冷える” ”エアコンが効かない時エンジンチェックランプが点灯した気がする”とのこと
チェックランプが点灯したのでしたら診断機でまず故障コードを読み出しますがなぜか何も検出していません。
しかし、水温が110℃に達していることに気が付きました!
この車両には水温計はなく水温ランプしかありません。そのため水温が異常に上がっていても気が付くことが遅れてしまいます。
水温異常の原因を調べるとラジエーターの電動冷却ファンが片一方回っていません。
この車両は左右2基装着されています。
水温が異常に上昇してエアコンまで掛けていればファンは全開で出回っていなければなりません。
ファンモーターを小突くと弱弱しくファンは回りだしました。
しかしこの程度の風力では冷却はできませんのでファンモーターの故障と判断して交換を行います。
ファンモーター交換後はファンはしっかり回り冷却ができるようになったためアイドリングでも水温は90℃ほどで安定するようになりました。
チャックランプが点灯したかは定かではありませんが冷却不良でエアコンも効かなくなったのは間違いありません。
電動冷却ファンはラジエーターの冷却水の放熱をするだけでなくラジエータの前にあるエアコンコンデンサーの熱も放熱するのでエアコンにも症状が現れます。
おそらくこの車両は120℃で高水温警告灯が点灯すると思われますが110℃でも十分オーバーヒートですので危険な状態でした。
最近の車両は水温計が省かれていることが多いのですが異常を検知するのが遅れるので非常に危険です。
冷却ファンの修理を行いほぼご依頼の停車時のエアコンの効きはよくはなったのですが、いまいち冷房の効きが正常な状態より劣っていると感じます。
走行中のエバポレーター(室内側のエアコンの冷える部分)の温度をモニターしてみます。
走行中はしっかり冷えていますが停車した途端に温度が上がってしまいます。
これは冷媒ガス量が少なくなるとおこる症状です。
冷媒ガスを回収して質量を測定します。
590gほど回収することが出来ましたがこの車両の規定量は800gですので210g少ないということです。
エアコンの冷媒ガスは正常な状態でも少しずつ減少しますので何年もエアコンガスを調整していないとこれくらいの減少は起きてしまいます。
規定量の800gを充填して先ほどと同じ条件で走行してみます。
元々がしっかり冷えているため、停車(アイドリング)してからの温度の上昇が抑えられアイドリングの状態でもしっかり冷房が効いていることを表しています。
走行中はエンジン回転数とともにエアコンのコンプレッサーの回転も上がるため作動安定域に入りますし、走行風が当たるためコンデンサーの放熱も効率よく行われるためガスの減少分もカバー出来てしまいます。
しかしアイドリング時は回転数も落ち冷媒の圧縮圧力も上がらず、冷却ファンだけでの放熱が間に合わず外気温が高いと効率が落ちてしまい結果エバポレーターの温度も上がってぬるい風が出てきてしまうのです。
今回の不具合は冷却ファンの故障とエアコンガスの減少の2つの原因で引き起こされました。
エアコンシステムはいろいろな機能が重なり合っていますので一つ一つ精査して直していく必要があります。