栃木県宇都宮市の整備工場
TEL 028-656-2588
月〜金 9:00 - 18:00 , 土・第2日曜 10:00 - 18:00

ご注意

ブログ内の整備・修理等各記事の作業内容や作業方法のご質問にはお答えできません。 また、作業料金についても車両を当社まで入庫いただき、実際に見させていただいてからのお見積りとなります。 概算の金額についても電話やメールではお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

故障修理・整備

締め付けトルク 整備ミス?設計ミス?

エンジンオイル漏れ修理のご依頼を受けました。

エンジンのヘッドカバーからの漏れ修理です。

こちらの車両は年数も経っておりパッキンの劣化もありますので交換時期でしたが、漏れた原因は他にもあるようです。

ヘッドカバーを取り外します。

 

 

鉄製のヘッドカバーで、ボルト6本で締め付けて固定しますが、ボルトの締め付け面をよく見ると・・・

かなり食い込んで変形しているのがわかると思います。

明らかにボルトの締め付けすぎです。

それに前回整備した者はオイル漏れの対策でヘッドカバーパッキンに液状ガスケットを全面に塗りたくっています。

本来は平面にパッキンを使用していますので液体パッキンは不要です。
※よく液体パッキンをあちこちに塗っているものがありますが万能薬ではなく適切な場所に少量塗布するのが正しい使用方法です。多く塗りすぎれば弊害があります。

 

このエンジンのヘッドカバーボルトの締め付けトルクはこのようになっています。

3.2±0.2N・mというこの締め付け力は、自動車で使用するトルクの中では非常に弱い締め付けトルクですので規定トルクで締め付けていればヘッドカバーは変形することはありません。

ボルトは6本しかありませんので締め付けすぎで変形してしまうとヘッドカバーパッキンを均等に押さえつけることが出来ませんので新品パッキンでもオイル漏れを起こしやすくなります。

恐らく漏れたものを何とかしようとして液体パッキンを塗りたくったのでしょう。

 

締めすぎですのでボルト周辺だけパッキンが変形して潰れていますし、液状ガスケットがはみ出しているのがわかります。

これは整備ミスと言えます。

しかし、一概に整備士のスキルの問題で片づけてはいけない根本的な原因があるのではないかと思います。

 

どのエンジンでもこのような部位にはパッキンを使用してシールする構造になっているのですがヘッドカバーの材質やメーカーの設計で固定方法が異なります。

 

こちらは似た構造のオートマチックのオイルパンのパッキンです。

パッキンにカラーが入っているのがお分かりになると思います。
ちなみにM6ボルトで締め付けトルクは7.4N・mです。

カラーがつっかえ棒になるのでオーバートルクでもオイルパンを変形させたりパッキンをつぶしすぎることもありません。

カラーの厚みでパッキンは適度につぶされる設計ですので均等に面圧を得ることが出来て漏れも防ぐことが出来ます。

 

しかし先ほどのヘッドカバーにはカラーはありませんのでヘッドカバーパッキンが潰れた分でのみボルトのトルクが掛かったようになっているだけです。

ヘッドカバーボルトに使用されているM6というサイズボルトにしては非常に低いトルクなのはパッキンを潰すだけの役割だからです。

 

他社同等のヘッドカバーの締め付けトルクはご覧のようになっています。
樹脂製ヘッドカバーでカラーがあります。

同じボルトサイズですがずいぶん違いますね。

 

 

殆どの整備士はM6サイズの小さなボルトではトルクレンチなど使用せずに手に覚え込んだ感覚で締め付けます。

一般的にボルトのサイズでどれくらいが規定の締め付けトルクかは把握しているのです。
※重要な部位などはもちろんトルクレンチを使用しますがすべてのボルトにトルクレンチを使用していたのではいつまでたっても整備は終わりません。

 

何を言いたいのかと言いますと整備士は本能的にボルトが緩むことを非常に恐れます。

今回のようなM6のボルトを他社ではカラーが入っているものでは、5~7N・mほどで締め付けているものを3.4N・mというかなり小さいトルクで締め付けなくてはならず、かつゴムパッキンが潰れるだけの感覚では締め付け不足を感じ不安になるということです。

不安でさらに締め付けるのでオーバートルクになってしまうのではないでしょうか?

 

整備する側も構造を理解して整備を行う必要があるのですが、メーカーごとに構造は違いますのでイレギュラーなことは数ををこなして経験を積まないと気が付かずミスをすることがあります。

 

良い車は走行させる性能だけでなく、どこへ行っても整備がしやすいことも重要です。

整備ミスは当然整備士のスキル不足の問題ですが、ミスを誘発しない設計も重要であり、そのような設計は結果市場での不具合(整備ミスも含め)を減らして車両(メーカー)への信頼につながることになります。

 

 

栃木県宇都宮市の整備工場月〜金 9:00 - 18:00 , 土・第2日曜 10:00 - 18:00

MASUTAKAブログ最新情報

ミツビシ パジェロミニ(H56A)ブレーキペダルが重い

ミツビシ  パジェロミニ(H56A)のご入庫 ブレーキペダルが重くてかなり強く踏まないと止まらないのと、ブレーキを踏むとエンジン回転が上昇するとの事。 ブレーキペダルにはマスターバックと呼ばれる倍力装置が装着されており軽い踏力で強くブレーキが効くようになっています。 このマスターバックが壊れると倍力装置が働いていないわけですからかなり強く踏み込まない限りブレーキは効かず車両を止めるのは難しくなります。 次にブレーキを踏むとエンジン回転が上昇するという不具合ですが、これもマスターバックの故障に起因します。 ...

続きを見る

スマート フォートゥー ワイパーリンク脱臼

スマート フォートゥーのご入庫 ワイパーが動かない、何か前のほうから動いている音だけがするとの事 入庫時ワイパーアームは動きませんがワイパーモーターの作動音は聞こえるのでこの音のことをお客様はおっしゃっていたようです。 このような場合ワイパーモーターから先のリンクに異常があることがほとんどです。 分解していきます。 ワイパーリンクは隙間から見えていますが外すことはできません。   いろいろ外してようやくワイパーリンクを取り外しました。 リンクのジョイント部分がさびて外れてしまっています。 樹脂のブッシュが ...

続きを見る

トヨタ プリウスα(ZVW40) エンジンがガタガタする

トヨタプリウスα(ZVW40)のご入庫 エンジンチェックランプが点灯してエンジンがガタガタするとの事。 チェックランプが点灯しているので故障コードを読み出します。 ・P0401 EGR流量不足 を検出しています。 EGR(Exhaust Gas Recirculation)とは排気ガスの一部を吸気側に戻して最高燃焼温度を下げるなど行うシステムになります。 EGRガス流量にエラーがあると検出しました。 まずは排気ガス流量をコントロールするEGRバルブを取り外して点検します。 バルブが見事に開きっぱなしで固着 ...

続きを見る

ゴールデンウィーク期間の休業日のお知らせ

ゴールデンウィークは4月27日(日曜日)から5月6日(火曜日)の間お休みとさせていただきます。

続きを見る

VW シャラン ガソリン混入による空燃比エラー

VW シャランのご入庫 エンジンチェックランプが点灯して回転も不安定でエンストを起こしたそうです。 故障コードを確認すると空燃比リッチエラーを検出 空燃比とはガソリンと空気の割合のことでここを適正に制御することでエンジンをスムーズに回すカナメのものになります。 今回、リッチによるエラーということは、ガソリンが空気よりも多く濃い状態になったことを表しています。   ガソリンが濃くなってしまう症状を考えていかなくてはなりません。 燃料噴射装置であるインジェクターの不良や燃料圧力の適正値エラーなどが考 ...

続きを見る

営業時間、営業日変更のお知らせ

2025年4月より第2土曜日を休業日とさせていただきます。 4月以降の休業日は、日曜、祝日及び第2土曜日となります。 ご不便をお掛け致しますがよろしくお願いいたします。 なお営業時間は、平日は9時から18時 土曜日は10時から18時となります。 お預かりおよびご返却に関しては上記以外のタイミングも可能ですので要ご相談とさせていただきます。 よろしくお願いいたします。

続きを見る

BMW X5(F15)エアサスペンション パンク

BMW X5(F15)のご入庫 走行中、何か後輪がゴツゴツする感じがするとのこと。 原因は一目瞭然このような姿勢になっていればゴツゴツするのも当然です。 車体後部が大きく下がってしまっています。 これはエアサスペンションがパンクしてしまっているため空気バネであるベローズ(エアスプリング)がつぶれてこのような姿勢になっているのです。 この状態は後輪にバネが無い状態と同じですので路面からの衝撃がダイレクトに伝わりゴツゴツしてしまいます。 ベローズはこのような形をしていて一見するとなにもおかしな感じはしません。 ...

続きを見る

BMW750(E65) パーキングブレーキユニット破損

BMW750(E65) 電動パーキングの警告灯が点灯してパーキングブレーキが掛からないとのこと。 現在、電動パーキングブレーキは軽自動車なども含めて多くのモデルで採用されていますが、この車種の時代では一部の上位モデルで採用され始めた時代のものになります。 電動モーターユニットがトランク内にありモーターが回りギアを回してワイヤーを引いて後輪のキャリパーを聞かせてブレーキするシステムになっています。 しかしユニット内部の歯車が破損してしまうことで作動できなくなるというトラブルが起きます。 実際ユニットを外して ...

続きを見る

VW アルテオン フューエルフィラーリッド開かない

VW  アルテオン 給油口が開かないとのことで入庫しました。 この車両はフューエルリッドに電磁ロックがかかるようになっているのですが解除できません。 正常な状態はリッドを軽く押すとこのように開くようになっています。 https://masutaka.co.jp/images/VID_20250125_103118.mp4   電磁ロックはアクチュエーターで作動させますが、アクチュエーターが悪くうまく作動しないというトラブルは比較的多く、アクチュエーター付近を叩いたりすることで動いてくれることが多いのですか ...

続きを見る

”直前直左視界確認”ご存知ですか?

自動車の法律保安基準の中に”直前直左視界確認”の項目があることをご存知でしょうか? あまり聞きなれない言葉かもしれませんがSUVなど車高の高い車両で、背の低い子供が車両の直前や直左(助手席下部)の死角に入ると見えず危険な事故につながります。 そこで車両直前や運転席反対側死角になる部分を運転手が確認することが出来るようにしなさいという法律になります。 法律的に平成19年1月以降の製作車両に取り付け義務が施行されています。 一般的にこのようなミラーが多くデザインがイマイチでかっこ悪いと思われて取り外す方もいら ...

続きを見る

-故障修理・整備

© 2025 増高自動車工業有限会社