エンジンがブルブル震えて加速もしないという症状でよく登場するのが点火系統の故障です。
ガソリンエンジンの場合、適切なタイミングで火花を飛ばすことでガソリンに着火させて爆発する仕組みになっています。
従来のディストリビューターやポイントを使っていた時代の点火システムは割愛させて頂き、現代車で使用されているダイレクトイグニッションシステムの不具合をご案内します。
ダイレクトイグニッションとはスパークプラグ1本に対してコイルが対をなしているシステムで、主にスパークプラグに直接取りつけられているものを言います。
※一部車両を除き大多数はこのシステムを採用しています。
形はこのようで中にはコイルが入っていて電圧を昇圧してその高電圧をスパークプラグに送ることでプラグギャップを電気が飛び越える際に発生する火花を点火に利用するのです。
こちらのお車、ブルブルエンジンがして加速しないとの事でご入庫。
3気筒エンジンですが、1気筒作動していないようです。
イグニッションアナライザー(イグニッション2次電圧を簡易的に測定することが出来るテスター)を使用して、2次電圧を測定してみると・・・
それぞれのシリンダーの平均電圧を測定してみて、3気筒エンジンで左から1番シリンダーと順になっているのですが1番シリンダーがずば抜けて電圧が高いのがわかります。
※平均電圧は横のグリーン線
50kv(5万ボルト)を超えているのでありえない状態です。
次にそれぞれの電圧波形を見てみるとやはり1番シリンダーは大きく跳ね上がっているのがわかります。
どのようななことが起きているのでしょうか?
始めにスパークプラグはギャップと呼ばれる隙間を高電圧の電気が飛び越える際発生する火花を利用すると説明しましたがこの隙間は当然、設計された規定の広さです。
ギャップは0.8から1.1mmが主流ですが、正常な場合ここを飛び越えさせるため必要な電気は2万ボルト前後で十分です。
右の波形が1.5万ボルトで正常な状態です。
しかし、左の波形のように5万ボルトを超えているということは電圧自体は高すぎますが、コイル自体の昇圧は行われているということになります。
では昇圧しているのになぜこれではだめなのでしょう?
答えはこちら
エンジンが掛かっている状態でイグニッションコイルを浮かしてみると何やら火花が見えると思いますが、本来はこのようにわきで火花が見えるわけないのです。
それはイグニッションコイルの絶縁が破壊されたための漏電している火花が見えているのです。
ヒビが見えますがこの筒は絶縁を保つ構造なのですがこのヒビから電気が外に漏れてしまっていたのです。
漏電によりプラグのギャップよりもっと大きな隙間を飛び越えていたためイグニッションコイルは昇圧してしまいあれだけの電圧となってしまった訳です。
当然漏れてしまっているのでスパークプラグでは火花は出ませんので不調が発生して当然です。
問題は、このコイルが単純に寿命で絶縁が壊れたものなのか、故障を招き寄せる何か要因が他にあったかということです。
当然機械ですのでいつかは絶縁が破られたりコイルが壊れてしまうということはあり得るのですが、実は壊してしまっているということも大いにあるのです。
その原因がスパークプラグの摩耗なのです。
右側は故障プラグですが、一番上の部分が尖がっているのがお分かりになるかと思います。
元々は左の新品のように角がしっかりあったのですが、火花が角めがけて飛んでいるうちに摩耗して丸まりギャップが広がったため飛び越えさせる電気が大きくなったことにより、その高電圧に絶縁が耐えられなくなったことで壊れて電気が漏れ出したのです。
今回はイグニッションコイルを交換すれば不調は収まります、しかし摩耗したスパークプラグを使い続ければ2次電圧は上がりいずれはまた絶縁を破壊しますので同時にスパークプラグも交換しました。
新品と摩耗したスパークプラグでどれだけ電圧に違いがあるか測定した結果 リンク
イグニッションコイルの寿命を全うさせるにはスパークプラグの性能維持が重要だということです。
ロングライフプラグと呼ばれるプラグの寿命は走行距離10万kmと言われていますがこれはあくまでも目安であり、エンジン回転を高く保つ運転や負荷が大きい運転が多い場合は当然もっと短いサイクルでの交換が必要になります。
特に軽自動車はエンジン回転も高めで負荷も大きいのでロングライフプラグとはいえ寿命は5万kmほどですので注意が必要です。