FIAT500のご入庫
エンストしたとの事
状況を詳しく聞き出すと信号などで停車しようとしたところ、停車と同時にエンジンも止まってしまったとの事。
入庫時はエンストもなくテスト走行しても特に問題なさそうです。エンジンの自己診断でも特に故障コードの検出もありません。
症状が再現できなかったのですがデュアロジックシステムにエラーが出ていたのでデュアロジックのメンテナンスを行いお返ししました。
しかしその後やはりエンストしたとの事でご連絡が入りましたので再度診させていただくことになりました。
再度よく問診させていただくと、20㎞以上走行した後で現象が発生したようなので十分暖まった状態で不具合は起きる可能性が高いです。
そこでテスト走行の距離を伸ばしてみると症状は現れました。
問診だけで伝わりずらかった状況が実際に不具合を再現できるともう少し細かく分析できました。
状況は
・信号停車直後にアイドリングが不安定になりそのままエンスト。
・再始動はアクセルを踏み込まないとできない。(かぶりに似た症状)
・なんとなくアイドリングがラフ気味
症状が現れていない時はデュアロジックのクラッチ操作不良(クラッチ切れ不良)によるエンストを想定していたのですが、実際にエンジン単体でのラフさや再始動困難などの症状ですのでエンジン自体に不具合があることが確定することが出来ました。
しかしエンジン自体には故障コードの検出はありません。
エンスト後の始動困難・かぶりやラフアイドルなど起きているので基本的なエンジンの点検から進めることにします。
点火系統は消耗の激しいスパークプラグと汚れているエアクリーナーを交換。
ミスファイヤーの検出はありませんでしたのであくまでもメンテナンスの一環での交換になります。
次にエンジンオイルレベルの点検です。
エンジンオイル量をレベルゲージで確認するのですが、何度見てもMAXレベルの遥か上にオイルレベルがあるように見えます。
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オイル交換履歴を見ると数100㎞前に他店で交換したシールが貼ってありましたので交換して間もないようです。
オイルが多すぎるようなので一度ドレンからオイルを抜き取ってみると規定量の倍ほどのオイルが出てきました。
これはもしかすると古いオイルを抜き取ることを忘れて新しいオイルを入れてしまった可能性が考えられます。
このエンジンの規定オイル量は3.0Lほどですので抜きとったオイルがほぼ倍の量ですので間違いなさそうです。
一応ターボ車でインタークーラー(吸気)にもオイルが回る可能性もありますのでホースを外すとやはりエンジンオイルが出てきましたので排出させます。
あまりここにオイルがいると強くアクセルを踏み込んだ時に吸気とともに溜ったエンジンオイルを吸い込んでしまいリキッドハンマーを起こす可能性があります。
リキッド(液体)ハンマーが起きれば液圧縮で完全にエンジンを壊してしまいます。
正規のエンジンオイル量に交換し直して、テスト走行を繰り返しますがエンストに至るような状況は起きませんでしたのでオイル量の不適切が原因として作業終了となりました。
当初短いテスト走行で出なかった不具合症状は長い時間乗ることでエンジンオイルが熱膨張して体積が大きくなり増えたようになって症状として現れやすくなったと推測できます。
エンジンオイル量を間違えるという整備ミスは時折見聞きするのですが、マフラーから異常な白煙が出たりエンジンが掛からないなど少し違った症状で出ることが多いのですがこの車両ではなんとなく症状がわかりずらかったことが原因究明に手間取ることになりました。
どのようないきさつでこのようなミスが起きたのかはわかりませんが、もっと大きな被害を及ぼすこともありますので気を付けなければなりません。