メルセデスベンツS300h(W222)

アドブルーの警告灯が出たので、アドブルーを給油したが警告が消えず”エンジン始動不可”の走行距離カウントダウンが進んでくるとの事。

AdBlueとは排気ガス中の窒素酸化物(Nox)低減させる尿素SCRシステムに使用する高品位尿素水のことでAdBlue(アドブルー)の商標名で一般的に知られています。
ディーゼルエンジンは窒素酸化物の排出が多いため排気ガスにアドブルーを噴霧することで排気ガス中の有害物質(Nox)の低減をさせるシステムになります。
仮にアドブルーが無くなってしまい噴霧できなくなっても、排気ガスに噴霧するだけのためエンジンの基本性能に影響がなく走行は出来てしまいます、その状態で使い続けられてしまっては排気ガス浄化システムの意味が無くなります。
そこで走行距離のカウントダウンを表示してユーザーにアドブルーの給油を促しそれでも給油しない場合は最終的にエンジンを掛けれなくするのです。
今回はユーザーでアドブルーを給油しても表示が消えずカウントダウンも進み早く手を打たないとエンジンが掛けられなくなるという状態でした。
診断機を使用して故障コードを読み出します。

複数故障コードを検出していますので読み解いていきます。
まずAdBlue充填レベルが低いと故障コードを検出していますが、給油済みでメモリ値なのでこれは解消されていると思われます。
次にAdblueシステムの機能障害で走行距離に制限を掛けているという現在値の故障コードが検出されていますがこれが大きな引き金のようです。
ではどのような機能障害なのかを調べていくときにNoxセンサー異常と窒素酸化物濃度の故障コードを検出していることが気になります。
Noxセンサーも比較的故障しやすい部品ですがNox濃度の限界値を超えたことでセンサー異常がつられている可能性があります、窒素酸化物が低減できていない可能性が高いのでAdblue噴射システムが正常に作動しているかを点検していくことにします。
AdBlue噴射システムの構成としてタンク内のポンプと噴射ノズルのの組み合わせになります。
ポンプは噴射圧力を作り出す役割ですので診断機からアクティブテストでポンプを駆動させて圧力が上がるか点検してみます。

しっかりAdblueの圧力が上がっていますのでポンプは正常に作動していると判断します。
次にその圧力を噴射するノズルを点検します。

ノズルにかかる電気を確認すると正常ですので制御側は問題なさそうです、そうなるとインジェクターに問題がるようなので取り外してみるとそこに答えがありました。

インジェクターの先端が結晶で固着してしまっています、これはアドブルーが結晶化して固着してしまってるのです。


新しいインジェクターでアクティブテストするとしっかり作動しますので、不具合品は固着により壊れてしまったようです。

交換後はエラーをリセットするとアドブルーのエラーも消えてアドブルー量の表示も正しくできるようになりました。
実はこのシステムの故障はこの車種に問わず非常に多く引き金は結晶化によりインジェクター以外にもポンプ自体の故障が起きています。
元々の造りの脆弱さもあるのかもしれませんが結晶化が起きているのがほとんどですので結晶化防止が重要になることは間違いありませんし、防ぐ手立てもこれくらいしか対策は無いと思われます。
当社ではアドブルーを給油する際には必ず結晶化防止剤を入れるようにするように勧めています。
このようなケミカルも各社から販売されるようになっていることからもこの不具合が多いことを物語っています。

最新型のクリーンディーゼルは様々な機能の元で性能を発揮しているのですが、あまりに精密に制御しているため逆に言えば精密ゆえに脆弱なシステムになってしまっているとも言えます。